• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

極低温環境を考慮した量子コンピュータ向けシステム・アーキテクチャ

研究課題

研究課題/領域番号 22K17868
研究機関九州大学

研究代表者

谷本 輝夫  九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (60826353)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード量子コンピュータ / 命令デコード
研究実績の概要

量子コンピュータは従来の計算機では効率よく解けない問題を解く方法として注目されている.中でも,誤り耐性量子コンピュータは,超伝導量子ビットの高集積性は,その実現可能性に大きく貢献すると考えられている.本研究では,量子プロセッサの量子ビットが今後増加することを見据えた量子ビットの制御に必要な古典デジタル処理回路の設計空間探索を行うことを目的とする.プログラマブルな量子コンピュータを実現するためには,プログラム(量子回路)を実行時にデコード,スケジューリングする必要がある.要求される命令発行スループットは量子ビット数に応じて増加する.そのため,今後搭載量子ビット数が増加すると古典処理が量子ゲート操作のスループットを律速しかねない.超伝導量子ビットは極低温環境で動作するため,同じく極低温環境で動作する単一磁束量子(SFQ)の制御回路への利用がこの問題の解決に有用であると考えられる.そこで,量子,古典それぞれの基本アーキテクチャを定義した上で古典処理の性能および電力モデリングに基づき設計空間探索を行う.さらに,具体的なアルゴリズムを対象としたケーススタディを行う.今年度は,誤り耐性量子コンピュータのデコーダに要求される機能について調査検討を行い,基本アーキテクチャの具体的な設計の準備を行った.量子ビットにはトランズモン型超伝導量子ビットを,誤り訂正には表面符号を前提とし,プログラム(ユーザが実行したい量子回路)と,実際に物理ビットに適用する量子回路の関係について調査した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

誤り耐性量子計算機の実現に必要となる,量子ゲート(量子回路)実行の自由度について調査・検討を進めた.誤り訂正には表面符号と呼ばれる符号を用いることを前提とする場合,実行すべき量子回路はシンドローム測定という基本単位の繰り返しである.実行したい量子回路に応じて,シンドローム測定の回路をわずかに変化させることにより,論理的な量子状態を所望の状態にすることができる.この変化は2次元格子状に配置された多数の物理的な量子ビット上の被演算論理量子ビットが割り当てられている物理ビットを包含する形状に表面符号を形成できるようシンドローム測定するよう作る必要がある.そのため,誤り耐性量子コンピュータの命令デコードでは,命令列に応じた被演算論理量子ビットを包含する表面符号の形成処理と,その表面符号に対応するシンドローム測定量子回路の生成,それを実現する制御パルスの生成の3段階に分けられることが分かった.シンドローム測定の量子回路は高々16通りであるためそのいずれかを選択できればよいが,アンシラビットの数だけ16通りの中から適切な1通りを決める処理を行う必要がある.また.物理エラーレートを下げてより高信頼な誤り耐性量子計算機を実現するためには,物理量子ビットの製造ばらつきや,動的かつランダムな挙動ゆれに対応して生成パルスを調整することが重要である.このためには大容量のルックアップテーブルが必要となると考えられるため,その実装方法には検討が必要であると考えられる,

今後の研究の推進方策

今年度の調査検討結果を活用して詳細な設計を進めていく.デコードに必要な処理の複雑さや,処理が持つ依存関係に着目し,それぞれの処理をどの温度ステージで実行するのが望ましいのかをモデルベースで議論し,その温度ステージに適したデジタル回路技術で実装することを検討する.

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの影響で予定していた旅費支出がなくなったため.必要な打ち合わせや研究動向調査は次年度行う計画である.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] WIT-Greedy: Hardware System Design of Weighted ITerative Greedy Decoder for Surface Code2023

    • 著者名/発表者名
      Liao Wang、Suzuki Yasunari、Tanimoto Teruo、Ueno Yosuke、Tokunaga Yuuki
    • 雑誌名

      Proceedings of the 28th Asia and South Pacific Design Automation Conference (ASP-DAC ‘23)

      巻: - ページ: 209-215

    • DOI

      10.1145/3566097.3567933

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Q3DE: A fault-tolerant quantum computer architecture for multi-bit burst errors by cosmic rays2022

    • 著者名/発表者名
      Suzuki Yasunari、Sugiyama Takanori、Arai Tomochika、Liao Wang、Inoue Koji、Tanimoto Teruo
    • 雑誌名

      Proceedings of the 55th IEEE/ACM International Symposium on Microarchitecture (MICRO-55)

      巻: - ページ: 1110-1125

    • DOI

      10.1109/MICRO56248.2022.00079

    • 査読あり
  • [雑誌論文] XQsim: Modeling Cross-Technology Control Processors for 10+K Qubit Quantum Computers2022

    • 著者名/発表者名
      Byun Ilkwon、Kim Junpyo、Min Dongmoon、Nagaoka Ikki、Fukumitsu Kosuke、Ishikawa Iori、Tanimoto Teruo、Tanaka Masamitsu、Inoue Koji、Kim Jangwoo
    • 雑誌名

      Proceedings of ACM/IEEE International Symposium on Computer Architecture (ISCA ‘22), pp. 366-382, June 2022

      巻: - ページ: 366-382

    • DOI

      10.1145/3470496.3527417

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Design of Variable Bit-Width Arithmetic Unit Using Single Flux Quantum Device2022

    • 著者名/発表者名
      Ishikawa Iori、Nagaoka Ikki、Kashima Ryota、Ishida Koki、Fukumitsu Kosuke、Oka Keitaro、Tanaka Masamitsu、Kawakami Satoshi、Tanimoto Teruo、Ono Takatsugu、Fujimaki Akira、Inoue Koji
    • 雑誌名

      Proceedings of International Symposium on Circuits & Systems 2022 (ISCAS ‘22)

      巻: - ページ: 3547-3551

    • DOI

      10.1109/ISCAS48785.2022.9937317

    • 査読あり
  • [学会発表] 極低温不揮発FPGAを対象とした誤り耐性量子コンピュータ向け表面符号復号器のRTL設計2023

    • 著者名/発表者名
      中村徹舟, 宮村信, 井上弘士, 川上哲志, 阪本利司, 多田宗弘, 谷本 輝夫
    • 学会等名
      情報処理学会研究報告, 2023年3月
  • [学会発表] 通信量に着目した QAOA 向け極低温 NISQ コンピューティングのアーキテクチャ検討2022

    • 著者名/発表者名
      富田祐永, 上野洋典, 谷本輝夫, 田中雅光, 井上弘士, 中村宏
    • 学会等名
      情報処理学会研究報告, Vol.2022-ARC-250 No.12, pp.1-11, 2022年10月

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi