2023年度は、2022年度から引き続き理論的な貢献を行った。特に、以下の3点について大きな貢献を実現できた。(1)マルチメディア分野トップの国際会議であるACM Multimediaに論文が採択され、発表を行った。この内容は、現在の主流の探索方式であるグラフベースデータ構造について、2系統存在する構築方式を整理しそのいいとこどりをするものである。これにより、従来と同程度の性能を達成するデータ構造を、従来よりも数倍高速に構築できる。グラフベース近傍探索方式の探索精度や速度を向上させる取り組みは多いが、構築時間を考慮する取り組みはまだ少なく、本研究はあらたな分野を切り開きうる内容であるといえる。(2)探索に関する国際コンペティションSISAP Index Challengeに参加し、いくつかの部門で世界二位を達成することが出来た。ここでは、探索の開始点やデータサイズを最適化するという実用的な方式を提案した。近傍探索は実用に近い技術でありながら、本当に精度や速度をチューニングしようとすると、チューニングできる部分が少ないという問題があった。本提案では、実用的なパラメータチューニングのガイドラインを与えた。(3)コンピュータビジョン分野最大の国際会議CVPRにて、探索に関するチュートリアルを行った。ここでは、国際的な第一人者であるMartin Aumullerらとともに、探索に関する最新技術を俯瞰することが出来た。この内容は今後の探索分野の方向を示す指標になったと自負している。今後も引き続き探索に関する研究を深めていく。
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