研究課題/領域番号 |
22K17936
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
佐瀬 一弥 東北学院大学, 工学部, 准教授 (20805220)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ハプティクス / 機械学習 / 圧力分布 / データ駆動 |
研究実績の概要 |
研究実施計画に基づき,2022年度は主に圧力分布測定装置の開発を行った.圧力分布測定装置は,指が対象物体に接触した際の指腹に生じる圧力分布を収集するためのシステムである.圧力分布センサには高解像度かつ高感度な静電容量型圧力分布センサ(PPS社製触覚アレイセンサ,ピッチ1.5 mm x 1.5 mm, センサ配置15 x 16)を導入した.また,指模型を様々な位置姿勢で対象物体に押し付けたときに生じる圧力分布を測定するために,指模型をエンドエフェクタに装着可能な6軸ロボットアームを導入した.また,指模型や実験試料作製のために光造形3Dプリンタを導入した.これらにより,圧力分布の自動収集システムのプロトタイプを構築した. 圧力分布データの収集には上記の装置のほかに,実際のヒト指を用いた方法と,ヒト指の計算モデル(有限要素モデル)に基づいた方法も検討した.ヒト指を用いた方法では,精密ステージを利用してヒト指を剛体平板に押し付け,その際の圧力分布を計測した.それと同条件でヒト指計算モデルの変形応力解析を行い,これらの結果を比較した.その結果,現状では実験と計算の間で接触面積と圧力分布の差異が大きかった.そのため,実験と計算の双方での妥当性を今後確認していく必要がある. 機械学習に基づいた触覚提示の基礎的検証として,位置を入力し,反力を出力する学習モデルの作成に取り組んだ.学習データは,6軸力覚センサプローブをモーションキャプチャシステムでトラッキングすることでプローブ位置とそれに対応する反力を測定して作成した.対象物体は柔軟物体とした.学習手法にはRBFネットワークを用いた.収集したデータを用いて構築した学習モデルを用い,力覚提示が可能であることが確認できた.今後は本手法を拡張し圧力分布提示に応用していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は主に圧力分布測定装置の開発を行う予定であり,計画に基づいておおむね予定通りに遂行した.具体的には装置開発における機器選定とシステム構成を行った.圧力分布センサには微細な圧力を高精度かつ高い再限度で取得することが求められたため,その要求を満たすものとして静電容量式の圧力分布センサアレイであるPPS社製触覚アレイセンサ(ピッチ1.5 mm x 1.5 mm, センサ配置15 x 16)を選定した.可動ステージとしては位置姿勢を制御可能で比較的高剛性なものとしてUFACTORY社6軸ロボットアームLite6を選定した.また,指模型や実験試料の作成のためにFormlabs社製光造形3DプリンタForm3+を導入した.導入完了後,これらの動作確認および簡易的に組み合わせたプロトタイプ作成を行った.しかしながら,導入時期が遅れたため実際の学習データの収集には至っていない.これについては次年度に行う. 一方で,機器導入までの間に,ヒト指を用いた測定システムの開発および実験,ヒト指の有限要素モデルの作成及び解析手法の検討や,機械学習による触覚提示手法検討を進めることができた.これらの進捗により次年度以降の学習手法の開発を円滑に遂行できることが期待される.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,実施計画に基づき圧力分布生成モデルの開発を行う.圧力分布生成モデルは機械学習の手法を用いる.まずは基礎検討として,入力(指の位置姿勢)は1次元(1方向の変位)とし,圧力分布も低次元化して学習モデルの作成と評価を行う.データの収集には圧力分布測定装置に指模型を装着して用いる.さらに,ヒト指またはヒト指計算モデルによるデータ収集も行い,これらのデータの妥当性についての評価も進める.機械学習の手法として,まずは力覚提示において実績のあるRBFネットワークによるデータ補間を基礎とした方法を試みる.基礎検討が順調に進んだ場合,入力次元を3次元位置とし,また高解像度な圧力分布を再現に取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画及び進捗状況に従って予算執行したが,年度末に実験計画をごく一部変更したために一部の物品を購入しなかった.生じた次年度使用額は少額であり,次年度の消耗品にあてる。
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