本研究では、ハイスループット計測が可能な神経細胞集団のCaイメージング法で得られた輝度変化から、機械学習を用いて、痙攣リスク予測を可能とする解析法を開発することを目的とした。前年度は、Caオシレーションのピーク検出AIの開発と算出されたパラメータセットを用いた多変量解析法を開発した。本年度は、阻害薬、リガンド、承認薬等の化合物ライブラリーであるLoPac1280化合物のデータから、開発したオシレーション検出AIを用いて検出したオシレーション波形から40種類のパラメータを算出し、陰性化合物と痙攣陽性化合物のパラメータを学習した痙攣毒性予測モデルを作製した。モデルにはOne-Class-SVM(OCSVM)とCNNの2種類を検討した。作製したOCSVMモデルは未学習の痙攣陽性化合物の毒性を62.2%の精度で予測し、CNNモデルは89.2%の精度で予測した。次に、より高精度で毒性を検出できたCNNモデルを用いて痙攣陽性化合物以外の阻害薬、リガンド、承認薬等のデータの毒性予測を行った。痙攣報告のある化合物、副作用報告のある化合物、市販薬の3分類をCNNモデルの予測結果から分類できるかを検討したが、明確に分類されず、特に市販薬の偽陽性が課題となった。そこで、パラメータよりも情報量の多いオシレーション波形を学習したCNNモデルを作製した。作製したCNNモデルは5種類の陰性化合物と27種類の痙攣陽性化合物を87%の精度で予測した。痙攣陽性化合物の毒性確率は用量依存的に上昇し、生体痙攣濃度が既知である3化合物の痙攣濃度における毒性確率を基準とすることで、21種類の痙攣陽性化合物の毒性を検出し、陰性化合物の偽陽性確率は0%であった。本研究で開発したオシレーション検出AIと、オシレーション波形を学習したCNNモデルは、Caイメージング法における痙攣毒性予測法として有効であることが示された。
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