研究課題/領域番号 |
22K18007
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
吉田 壮 関西大学, システム理工学部, 准教授 (70780584)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ソーシャルメディア / レコメンデーション |
研究実績の概要 |
本研究では、フィルターバブルの解消を目指し、価値観の多様性に配慮したソーシャルメディア推薦技術の実現に取り組んでいる。その成果は以下の通りである。 1)SNSからの価値観の検出およびその意味理解法の開発:Twitterからツイートを収集し、ネットワークを用いてツイートをトピックに分類する手法を開発。分類されたトピックの拡散ユーザの分布から偏向度合いを算出し、トピック内のツイート群から特徴語を抽出することで、偏向している可能性の高い話題や単語の特定が可能となる。また、他トピックへの引用リツイートの攻撃性を分析し、偏向度合いと攻撃性の相関やトピック間の対立構造を検出した。これにより、集団内の価値観の多様性を検出する手法と、個々の価値観の意味を理解する手法を確立することができた。 2)多様な価値観を含む推薦リストを生成するパーソナライズ推薦法の開発:多様な視点の情報を推薦するアルゴリズムを提案。提案モデルは、推薦候補が属するコミュニティを検出し、推薦候補のリストのコミュニティ網羅性を最大化することで、ユーザが探索可能な意見の多様性を拡張する。具体的には、ユーザの行動履歴との関連性を維持しつつも、リストのコミュニティ冗長性を排除するように推薦候補の順位を並べ換える手法を構築。本手法は、行動履歴に基づく推薦候補の生成及び多様性に基づく推薦順位の決定をend-to-endで可能とし、関連性と多様性のパラメータを用いて、リストの多様性を制御可能である。手法の性能は、既存の推薦手法との比較実験により検証されている。 これらの研究成果は、ソーシャルメディア利用者に対して、異なる価値観や意見を持つ情報を効果的に推薦する手法を提供することができる。本研究により、フィルターバブルによる情報偏りや対立構造の悪化を防ぎ、より健全な情報環境を実現することが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、フィルターバブルの解消に向けたソーシャルメディア推薦技術の実現に着実に進んでおり、これまでに以下の進捗がある。 SNSからの価値観の検出およびその意味理解法の開発に成功し、Twitterからツイートを収集してトピックに分類する手法を確立。さらに、分類されたトピックの拡散ユーザの分布から偏向度合いを算出し、トピック内のツイート群から特徴語を抽出することで、偏向している可能性の高い話題や単語の特定が可能となった。また、他トピックへの引用リツイートの攻撃性を分析し、偏向度合いと攻撃性の相関やトピック間の対立構造を検出することができた。 多様な価値観を含む推薦リストを生成するパーソナライズ推薦法の開発を行い、多様な視点の情報を推薦するアルゴリズムを提案。このアルゴリズムでは、推薦候補が属するコミュニティを検出し、推薦候補のリストのコミュニティ網羅性を最大化することで、ユーザが探索可能な意見の多様性を拡張することができる。また、本手法は関連性と多様性のパラメータを用いて、リストの多様性を制御可能であり、手法の性能は既存の推薦手法との比較実験により検証されている。 しかしながら、現在の課題として、大規模データを用いたシミュレーションの実施が挙げられる。これまでの研究では、比較的小規模なデータセットを用いて手法の有効性を検証してきたが、現実のソーシャルメディア環境では、はるかに大量のデータが生成されている。そのため、大規模データを用いたシミュレーションを実施し、提案手法のスケーラビリティや現実環境への適用性を検証することが重要である。大規模データを扱う際には、計算負荷や処理速度の問題が発生する可能性があるため、効率的なデータ処理やアルゴリズムの最適化が求められる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、研究は順調に推移しているので、当初の計画通り研究を進めることを考えている。今後の研究計画として、以下の項目が挙げられる。 SNSからの価値観の検出およびその意味理解法の拡張・改善:より高い精度の検出手法や新たなデータセットに対する適用を検討し、手法の汎用性と効果を向上させることを目指す。また、異なる言語や文化における価値観の検出方法についても研究を進める。 多様な価値観を含む推薦リストを生成するパーソナライズ推薦法の最適化・実適用評価:リストの多様性を適切に制御するためのパラメータ調整や最適化手法を検討し、推薦アルゴリズムの性能をさらに向上させる。また、実際のソーシャルメディア利用者に対する適用性や効果の評価を行うため、ユーザースタディを実施する。 実用化に向けたシステム開発:研究成果を実用化するため、ソーシャルメディアプラットフォームと連携できるシステムの開発を進める。推薦技術を搭載したアプリケーションやブラウザ拡張機能など、ユーザにとって便利で効果的な形で提供できるよう検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、論文掲載に関する執行が十分にできていないことによるものである。研究代表者の論文執筆が当初予定していたレベルに達せず、発表できない状況となったため、執行を取りやめざるを得なかった。この結果、雑誌掲載料として13万円程度の執行ができなかった。また、論文執筆の遅れに伴い、英文校閲費として10万円の執行が次年度に持ち越された。これらの要因から、合計で23万円程度の執行ができず、使用額に差異が生じた。次年度の使用計画では、前年度に執行できなかった23万円を、雑誌掲載料と英文校閲費に充てる予定である。具体的には、論文が発表できる状態になった際に、雑誌掲載料として13万円を使用する。また、論文執筆が進行し、英文校閲が必要になったタイミングで、英文校閲費として10万円を使途とする。これらの使用計画により、前年度に執行できなかった分を活用する。
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