研究課題/領域番号 |
22K18011
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 第二言語コミュニケーション / 会話シナリオ / 情動要因の支援 / 非言語コミュニケーション |
研究実績の概要 |
本研究では,第二言語(L2)学習リソースの持続可能な普及を促進するための統合フレームワークの開発に挑戦している.本年度は,これまでの成果を基に,会話の内容及び学習者の情況に応じた動的な言語・非言語的会話戦略制御モジュールの洗練に取り組んだ.具体的には,学習者の習熟度(会話スキル、動機付けレベル)に応じて柔軟かつ頑健に応対できる適応的会話シナリオ生成の仕組みを実装し,提案システムの新規性およびL2学習支援への可能性を確認した.また,会話エージェントの言語・非言語会話戦略モデルの精緻化を行い,エージェントから学習者への情動の伝達促進及び会話タスクの遂行に関する知見を得た.インタラクションの更なる迫真性向上を図るために, 従来のアニメーション・エージェントでなく,CGながらリアルな人間と見まがう容姿を持 つバーチャルヒューマン(Virtual Human)技術を導入した.さらに,提案フレームワークに基づいて,大規模言語モデルを活用することで,あらゆるサービス関連の状況で容易に会話シナリオを作成できるインターフェースを実装した.このインターフェースの特徴としては,教育者が専門的な知識を必要とせずに,高品質な会話シナリオを効率的に作成できることである.本フレームワークは,教育者による学習リソース設計の中心に置き、柔軟性、協調性、使いやすさを維持しつつ、多数の学習者に対応可能なコスト効率の高いインテリジェントチュータリングシステムの開発につながる可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに会話オーサリング基盤の整備及び適応的会話シナリオ生成仕組みの洗練に取り組んだ.特に,大規模言語モデル(LLM)を活用することで,効果的な会話オーサリングインターフェースの設計を実現し,会話シナリオの作成を大幅に容易化することができた.これにより,適応的会話シナリオ生成仕組みの開発およびシステム評価を円滑に進めることが可能となった.また,バーチャルヒューマンエージェント技術を駆使して,非言語情動フィードバック提示仕組みを洗練したことで,システムインターフェイスの改善も実現した.
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今後の研究の推進方策 |
これまで,本研究で提案した統合フレームワークおよび会話オーサリングインターフェースの有効性を更に検証するために,多様なL2学習者と教育者を対象とした大規模なケーススタディを実施する必要がある.また,LLMを活用した会話シナリオ生成の精度向上および適応性の強化に取り組み,学習者の習熟度や個人の特性に合わせたよりパーソナライズ化された学習体験の提供を目指す.さらに,提案システムを実際の教育現場に導入し,長期的な運用を通じてフレームワークの実用性を評価するとともに,教育者からのフィードバックを基にシステムの継続的な改善を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,大規模言語モデル(LLM)を活用した会話オーサリングインターフェースの開発に注力したため,当初予定していたバーチャルヒューマンエージェントの高度化に関する研究の一部を次年度に延期することとなった.LLMを用いたオーサリングインターフェースの開発に集中的に取り組んだ結果,会話シナリオの作成を大幅に効率化できる基盤を整えることができた.次年度は,この基盤を活用しつつ,バーチャルヒューマンエージェントの非言語情動表現の生成モデルの高度化と,学習者の習熟度に応じた適応的なインタラクションの実現に取り組む予定である.具体的には,LLMを用いて生成した対話シナリオをベースに,エージェントの非言語行動をリアルタイムで生成・制御する仕組みを開発し,学習者との自然なインタラクションを実現する.まこれらの取り組みを通じて,未使用となった予算を有効に活用し,より高度な適応型L2学習支援システムの実現を目指す.
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