PM2.5などに代表される環境中微粒子は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎のような呼吸器系、免疫・アレルギー系疾患を誘発あるいは悪化させることが知られているが、その詳細な分子メカニズムに関しては未解明な部分が多い。本研究では、細胞間の情報伝達の担い手であり、近年様々な生命現象、疾患と密接に関連していると言われている細胞外小胞(Extracellular vesicle; EV)に着目し、環境中微粒子がEVの産生や構成分子組成に与える影響を評価し、それらの粒子種による異同を明らかにすることで、環境中微粒子が呼吸器系、免疫・アレルギー系疾患を誘発・増悪させる分子メカニズムの一端を解明することを目的とした。 昨年度まではヒト肺胞上皮細胞A549に対して種々の環境中微粒子を曝露した際の細胞活性や粒子の局在、培養上清中に放出されたEVの物性評価などを行った。その結果、黄砂やディーゼル排気微粒子などを曝露した際に、細胞活性の低下およびEVの放出促進などが認められた。 最終年度においては、喘息モデルマウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)および血清より単離したEVの物性評価を行った。各種環境中微粒子(黄砂、ディーゼル排気微粒子、酸化チタン粒子など)を、オボアルブミン(OVA)誘発性喘息モデルマウスに2週間ごとに計4回気管内投与した。BALFおよび血清からEVを単離精製し、ナノ粒子トラッキング解析やウエスタンブロット、イメージングフローサイトメトリーなどを用いた解析により、黄砂やディーゼル排気微粒子においてOVAと複合投与するとBALFへのEVの放出が促進されることが分かった。
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