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2023 年度 実施状況報告書

都市水環境に残留する抗うつ薬の存在実態と排出源に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K18042
研究機関大阪市立環境科学研究センター

研究代表者

大方 正倫  大阪市立環境科学研究センター, その他部局等, 研究員 (80828939)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード抗うつ薬 / 代謝物 / LC-MS/MS / 固相抽出 / 都市河川
研究実績の概要

今年度は、前年度に開発した分析法を用いて、都市河川をフィールドとした抗うつ薬の調査モニタリングを行った。
まず、前年度開発した分析法について、その前処理(固相抽出工程)でMilnacipranの代謝物が回収されなかった原因を調べた。その結果、試料通水後の固相の洗浄工程で溶出してしまうことが判明した。この洗浄工程は、固相に保持された夾雑物質を除去し、LC-MSでの対象物質群のイオン化阻害を低減するために必要である。これらを総合的に勘案し、Milnacipranの代謝物を対象物質から除外することとした。
次に、この分析法を用いて、都市河川での抗うつ薬とその代謝物の調査モニタリングを複数回実施した。
その結果、抗うつ薬の代謝物については、対象9物質中7物質が検出された。このうちFluvoxamine acid とO-Desmethyl Venlafaxineは、全36地点で検出され、かつ、代謝前の原体よりも高濃度であった。Fluvoxamine acidについては、Fluvoxamine(約半数地点で検出)よりも検出地点数が多く、濃度レベルが1桁高い地点もあった。また、O-Desmethyl Venlafaxineについては、約半数の地点でVenlafaxine(全地点で検出)よりも2~3倍高い濃度で検出された。その他、N-Desmethyl Citalopramについては、Escitalopramと同程度の濃度で検出されていた。したがって、一部の抗うつ薬については、水環境中における代謝物の存在にも留意する必要があることが分かった。
なお、抗うつ薬のうちVortioxetineについては、2019年から国内で使用され始めた最も新しい抗うつ薬で、一部地点において0.1ng/Lオーダーの濃度で検出された。本報が、国内の水環境におけるVortioxetineの初めての検出報告事例と考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

水質試料において、Milnacipranの代謝物が回収されなかった原因を明らかにし、一斉分析法を確定させた。
一方で、育児のための勤務時間短縮等に伴い、河川底質や下水汚泥を対象とした前処理方法の検討は見送り、水質試料に焦点を絞って分析を行う方針に変更した。
そのうえで、河川を対象とした調査モニタリングは実施できた。

今後の研究の推進方策

河川水中から抗うつ薬やその代謝物が検出されることがわかったが、その主要排出源の1つとして下水処理場が考えられる。しかしながら、下水処理での抗うつ薬の除去特性に関する情報は乏しい現状にある。したがって、下水処理場の出入口での調査モニタリングを繰り返し行い、抗うつ薬とその代謝物の除去特性を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

底質・汚泥試料の前処理方法が未検討のため、支出が想定よりも少なくなった。下水試料を扱う際には、汚染や混入を防止するために、専用の器具を用いることが望ましい。したがって、次年度に下水試料用の実験用器具購入経費等として使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2023

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 水環境中の抗うつ薬およびその代謝物の存在実態2024

    • 著者名/発表者名
      大方正倫
    • 学会等名
      第58回日本水環境学会年会
  • [学会発表] 水環境中の抗うつ薬およびその代謝物の一斉分析法の検討2023

    • 著者名/発表者名
      大方正倫、浅川大地
    • 学会等名
      第2回環境化学物質3学会合同大会

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公開日: 2024-12-25  

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