研究課題/領域番号 |
22K18045
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
李 沁潼 東洋大学, 生命科学部, 助教 (80821727)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | メタン循環 / 富栄養化湖沼 / メタン酸化 / メタン生成 |
研究実績の概要 |
強力な温室効果ガスであるメタンは、主に湖沼などの淡水環境の嫌気層で生成される。調査対象の茨城県の霞ケ浦は、生活排水が流入して富栄養湖になっており、底泥中はメタン生成に有利な環境になっている。霞ヶ浦の湖底の境界層において、季節変動に伴い酸素濃度が変動しており、そこに行われるメタン酸化過程は季節的にどのような特徴を持っているかは把握されていない。本研究は霞ケ浦の湖底境界層を対象に、底泥境界層のメタン酸化速度の季節変化と、メタン循環に関わる微生物の相対分布について調べた。 まず底泥中のメタン濃度は、3地点とも、冬季における顕著な減少と、夏季~秋季における増加が確認された。また、溶存メタン濃度は、深度が深くなるにつれて増加する傾向にあることが確認できた。メタン生成の機能遺伝子であるmcrAのコピー数は、2022年3月と2022年6月を除き、深度が深くなるにつれて若干増加する傾向がみられたが、季節に問わずほぼ一定量存在していた。好気性メタン酸化の機能遺伝子であるpmoAのコピー数は、深度及び季節による大きな差は見られず、嫌気性メタン酸化微生物であるNC10 の16Sr RNA遺伝子のコピー数より大幅に上回った。これからのことから、霞ケ浦底泥中におけるメタン酸化は、主に好気性メタン酸化微生物が担っていることが示唆された。 湖底境界層のメタン酸化活性はメタンの初期濃度が低い6月では、好気条件での酸化活性が嫌気より高かった。メタンの初期濃度が高い9月及び12月は、好気及び嫌気条件での酸化活性に明確な差が見られなかった。霞ケ浦湖底境界層のメタン酸化活性は、6月に一番高く、9月と11月で低い傾向だった。しかし、9月と11月のメタンの初期濃度が高く、48時間の培養期間ではメタンが十分に酸化されなかったことから、今後は培養期間を延長し、長期的モニタリングが必要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は計4回の霞ケ浦調査(季節に1回)を実施し、湖水中及び底泥中の水質プロフィル、メタン濃度の鉛直分布、及び底泥中の各種メタン酸化・メタン生成微生物の存在量を把握することができた。また、メタン循環微生物の相対分布に影響を及ぼしている環境因子の抽出もできた。嫌気性及び好気性メタン酸化活性の測定手法の立ち上げができ、来年度は今年度の調査で確立された体制で続いて実施していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
霞ケ浦湖底境界層のメタン酸化活性は、6月に一番高く、9月と11月で低い傾向だった。しかし、9月と11月のメタンの初期濃度が高く、48時間の培養期間ではメタンが十分に酸化されなかったことから、今後は季節ごとの調査地点や調査回数を積み上げ、湖底境界層のメタン酸化の変動要因解明を行う。また、微生物の解析について、脱窒に関与する微生物の定量や、次世代シーケンシングを用いた微生物叢の解析も実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:研究代表者の所属機関変更に伴い、次年度以降の研究を実施するために必要な機材移設・郵送を年度変わり目に実施したため、その費用に該当する金額が残された。 使用計画:必要な機材移設・郵送の際に発生した費用は新しい所属機関で会計処理をする予定である。
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