研究課題/領域番号 |
22K18120
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
鈴木 重周 成城大学, グローカル研究センター, 研究員 (50773785)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | クロード・カーアン / マルセル・シュウォブ / ユダヤ系フランス人 / ユダヤ性 / ヒロイン |
研究実績の概要 |
本研究は、シュルレアリスト写真家として知られるクロード・カーアンをフランスにおける「ユダヤ人女性表現者」の系譜に位置づけ得る存在としてとらえ、ユダヤ性とジェンダーをめぐる問題系からその文学テクストを再検討する試みである。 本年度は、研究の基礎を作ることを目的に、カーアンのテクストを国内大学図書館およびフランス語圏の関連図書館ウェブサイトから収集・整理し今後の研究の基礎を作る作業を集中的に行った。写真家としての活動が主に知られており、文学テクストが全集等にまとめられていないカーアンのコーパスとしては、現時点では全一冊の『著作集』(2002)が存在するのみであるが、調査によって彼女が暮らした英国ジャージー島の歴史遺産管理委員会ウェブサイトから新しい資料を得ることができた。また、学習院大学フランス語圏文化学科図書室に現在購入することのできないカーアン関係図書が所蔵されているため、同所で継続して調査を行っている。 上記の調査をふまえ、現在はカーアンが歴史上の女性たちを再解釈したフィクション『ヒロインズ』(1925)に着目し研究発表(2023年7月予定)と論文執筆の準備を行っている。サッフォーやシンデレラに加えユディトやサロメらユダヤ人女性を従来とは異なる女性像に変換するこのテクストは、叔父である作家マルセル・シュウォブの『想像伝記集』(1896)の影響を強く受けていることは明白であり、叔父が著したヒーローの「評伝」をヒロイン視点に置き換えたものといえる。両者の関係を文学史から位置づけ比較することでカーアンの独自性を浮かび上がらせることを企図している。 加えて、美学美術史研究者とのモダニズムをめぐる共同研究で、1920年代から30年代にかけてのカーアンの活動をパリの文学サークルやユダヤ・コミュニティとの関係から明らかにする研究に着手しており、研究会で発表(2023年7月)する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、フランス語圏の図書館や文書館を中心としたウェブサイトからの資料発掘と国内大学図書館での資料収集から研究に着手した。資料の収集自体は順調に進んでいるが、カーアンは報告者にとって新たな研究対象となるため、資料を収集し本研究に沿って分析・整理するのに想定より時間がかかっている。そのため「やや遅れている」とした。成果公表は二年度目から順次行う。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度の資料収集をふまえ、今年度はその成果を所属学会と研究会で順次発表し、論文にまとめる。 また、感染症や渡航費高騰をめぐる状況が落ち着けば、本年秋以降にフランス(ナント市立図書館、ロワール=アトランティック県公文書館)およびイギリス(ジャージー島歴史遺産管理委員会)での資料調査を行う。状況により滞在日数が限られるため、しっかりと計画したうえで効率的に調査を行いたい。資料調査では、現在継続中のカーアンの文学テクスト分析に加え、カーアンとパートナーであるマルセル・ムーアがパリを逃れジャージー島で行った第二次大戦中のナチスに対する「個人的レジスタンス」の際に作成した反戦ビラに関する資料を収集する予定である。ジャージー島に残されているカーアンとムーアの反戦ビラを分析することで、彼女たちが「戦争」と芸術活動をどのように結びつけていたのかを明らかにし、「ユダヤ人と愛国心」をめぐる問題系にも接続させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していたフランス語資料のうち、いくつかをフランス語圏の図書館等のウェブサイトおよび国内大学図書館での資料調査で入手することができたため余剰が生じた。余剰分は次年度以降の海外での調査費用に充当する予定である。
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