研究実績の概要 |
中性子はその平均寿命の測定や電気双極子能率の測定など、「標準理論を超える物理」を実験的に検証する方法として利用されている。一方、中性子は元素の原子核と相互作用を起こし、核特有のコントラストを持つ透過像や中性子の散乱・回折パターンを提供する。例えば中性子はH, B, Liなどの軽元素の反応断面積が、Fe, Cu, Pbなどの重元素と比較して大きく、X線とは逆の傾向がある。このため中性子線の物質の透過像を用いた中性子イメージングは、重金属容器中の水や有機物など含水素物質の検出に有効で、高度経済成長期に大量に建設された高架道路や橋、またロケット部品などの大型構造物内部の状態を確認することができる。また、燃料電池内のLiや水分子の移動を可視化する非破壊検査などに大きな期待が寄せられている。したがって、優れた空間分解能と汎用性を併せ持つ中性子イメージング検出器の必要性が高まっている。 我々は、薄いガラスに細孔が規則正しく空いたガラスキャプラリープレート(CP)を用いて、微細な電極構造を持つマイクロパターンガス検出器(MPGD)の開発を進めてきた。本研究では、これまでにない高い空間分解能(50 um)を持つ中性子イメージング検出器の実現を目的に、細孔径が25 umでその表面にファネル構造を施したCPを持つ新しいMPGDを開発する。そして、中性子変換材と封入する混合ガスの研究も併せて行い、開発した中性子イメージング検出器の実験現場での研究利用を目指す。 本年度は、細孔径が25 umでその表面にファネル構造を施した新型のCPの開発を行った。また、新型CPを搭載するための実験チェンバーの改良を進めた。これらの新型CPの基礎特性試験を行い、ビームラインでの中性子透過画像取得を目指す。
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