研究課題/領域番号 |
22K18127
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川原 亮 京都大学, 化学研究所, 助教 (00807729)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ビームリサイクル / アクティブ標的 / MCP / 加速器 / 原子核物理 |
研究実績の概要 |
本研究ではビームリサイクル技術の核となるアクティブ内部標的(Internal active target: IAT)の開発を行っている。一般的に核反応実験では粒子を標的に衝突させるが、この時核反応しなかったほぼ全ての粒子を捨ててしまっている。ビームリサイクルとは重イオン蓄積リングとIATを用いることで核反応するまで粒子を蓄積・衝突させ続ける方法であり、従来の一万倍以上の効率化が期待されている。ビームリサイクルで粒子を蓄積するためにはIAT通過によって生じた角度分散とエネルギー分散を的確に補正する必要があり、本研究ではその補正のための要素技術開発を行っている。 IATでは蓄積粒子が通過した位置とタイミング情報を検出し、その信号波形を蓄積粒子がIATから補正器に到着する間(約300 ns以内)にフィードバックする必要がある。今年度はオフラインでのIATの性能評価とフィードバックシステムのテストを行った。 IATはMCPとディレイラインアノードで構成され、241Am線源と多孔コリメータを用いて入射位置と検出位置の整合性を確認した。その結果、ディレイラインアノードの読み出しから解析した検出位置情報は若干歪んでいることが分かり、入射位置との整合性を取るためには補正が必要であることが明らかになった。この歪みはディレイラインの特性によるものと考えており、デザインや回路素子によっては歪みを解消できる可能性もあると考えている。 フィードバックシステムではIATで取得した信号を 300 ns 以内に波形整形(極性自在のユニポーラ波形とバイポーラ波形)・輸送・増幅という処理を行う必要がある。今年度は高速動作可能なFETを使用することで高速波形整形を試みた。その結果25 ns 以内に波形整形を完了させることに成功し、輸送や増幅も含めて約 160 ns でフィードバック可能なシステムの構築に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は現在までに概ね順調に進んでおり、アクティブ内部標的(Internal active target: IAT)のテスト機開発とその性能評価、またフィードバックシステムのテストまで完了している。 IATのテスト機はMCPと自作のディレイラインアノードで構成され、241Am線源を用いて性能評価を行った。多孔コリメータによってα線のIAT入射位置を制限し、ディレイラインアノードから読みだした信号を解析することで検出位置を解析しそれらの整合性を評価した。その結果、検出位置に歪みが生じたがこれは先行研究でも報告がある事象であり、ディレイラインのデザインや印可電圧などを調整することで改良可能と考えている。しかし、ビームリサイクルに必要な性能的にそもそも高い位置分解能が不要である可能性が計算から示唆されたため、ディレイラインアノードではなくデカルト直交座標における各象限に対応する4枚のアノード板というデザインも検討中である。IATの読み出しを4枚のアノード板で行った場合、得られる情報は4パターンだけでありそこから粒子がIATの上下左右のどこを通過したのかをOR回路から同定するシンプルな設計が可能となる。 IATから補正器へのフィードバックには極性自在のユニポーラ信号とバイポーラ信号が必要であり、前者は単純なFETスイッチ、後者は2つのFETを使用したプッシュプル回路でテスト回路を作成した。適切なノイズフィルタを挿入することでほぼ要求仕様通りの波形整形に成功し、テスト項目として後は実際のMCPの信号波形を使用したテストのみ残っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は先ずIATの方式を決定する計算や設計を優先し、ディレイラインアノードの要不要の決断を行う。その後再びオフラインテストを行い、そのテストで得られた信号を用いてフィードバック回路をドライブするテストを行う。また、実際には補正器とのインピーダンスのマッチングを取る必要もあるため、インピーダンス計算を行い設計した補正器を実際に作成し、そこにフィードバック信号を印可するテストも行う予定である。
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