本研究の目的はレーザー加工技術により、マイクロスケール加速構造を成形し、将来のテーブルトップ量子ビーム源の基盤となる高電界な完全光駆動電子加速を実現することである。研究2年目には、時間領域差分法による電子加速器構造の計算を行うことで、電子加速が可能な構造を決定した。計算構造は計算コストを軽減するために2次元的に行った。まず、設定空間は25μm×100μmの空間を用意し、波長10.6μmの光が屈折率2.0の媒質に入射することを仮定した。2対の回折格子構造における回折構造部を向かい合わせに4μmの距離に配置し、2つの回折格子構造の背面方向からそれぞれレーザー光パルスを入射した際、2つのパルスが格子対の中心で重ね合わさった際の結果を示した。格子数が4つの回折格子全てにおいて、電場が反転して加速位相が可視化されている。これにより、波長10.6μm近傍で回折格子型光加速構造が機能することが確認できた。また、フェムト秒レーザー加工技術により、サファイア、ダイヤモンド(HPHT)、フッ化カルシウム、シリコン、塩化ナトリウムに対して、レーザー加工を行い、塩化ナトリウム以外の材料に対して中赤外線領域で有効な電子加速構造を作成することに成功した。また、サファイアに対して更なる高度化に向けたレーザー科学エッチング法を検討し、サブミクロン以下の精度で加工を実現することができた。これらの知見により、電子加速に有効な技術を確立することができた。
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