研究課題/領域番号 |
22K18153
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
後藤 晶 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (80707886)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | クラウドソーシング / オンライン実験 / 利他性 / 主観的幸福度 / リスク選好 |
研究実績の概要 |
本研究においては,想定外の事象の発生により個人の選好がどのような影響を受けるのか解明することを目的として,研究を積み重ねている.本研究においては,オンライン実験ならびにパネル実験の両者を組み合わせて実験を実施している. パネル実験については,2022年度より向社会性やリスク選好などを中心に11回の実験を実施し,進捗状況は順調である.実験項目については検討した結果,社会的選好については他者に対する分配行動から向社会性を評価するSVOスライダー法および他者に対する信頼の程度を示す一般的信頼尺度,リスク選好については100個の箱のうち1個に爆弾が入っているものを何個集めるかを決めるBRET法を用いて実験を実施している.それ以外に,主観的幸福度ならびに精神的健康尺度を基本的実験項目として実験を続けている.現在までのところ,想定外の事象として能登半島地震の影響について分析し,精神的健康尺度をはじめ,いくつかの項目で影響が認められている.具体的には,震度5以上の地域で精神的健康尺度の「改善」などが認められている. 一方,オンライン実験については,基礎研究としてintro.jsを使った実験を実施している.これにより,オンライン実験におけるsatisfice行動を抑制できることを確認した.一方,カタストロフの影響を検証するための経済ゲーム実験の準備も順調に進んでいる.5期目終了後に累積獲得ポイントが0.3倍に減少する想定外の事象であるカタストロフを発生させ,リスク選好および時間選好に与える影響を解明する10期繰り返し累積ありBRET実験については,プログラムが完成しており,動作検証・予備実験なども実施しており順調に進んでいると言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パネル実験については,2024年5月までにWave11までの実験を実施した.2か月に1度,社会的選好・リスク選好・時間選好およびその他の項目に関するデータを収集し,実験期間中に生じた災害や個人に生じたイベントとの因果関係を分析している.現在までのところ,全体的なトレンドとして,選好への大きな影響は認められないが,能登半島地震をはじめ,いくつかのタイミングで影響が認められている.この点については,より詳細な分析は必要であるが,面白い結果が得られたと考えている.また,いずれの実験項目についても安定した結果が得られていることから,尺度としての妥当性も一定程度あることを確認できたこと,地域差や世代差,所得差などが観察されていることも意義深いであろう. 一方,オンライン実験については,基礎研究としてintro.jsを使った実験を実施している.これにより,オンライン実験におけるsatisfice行動を抑制できることを確認した.一方,カタストロフの影響を検証するための経済ゲーム実験の準備も順調に進んでいる.5期目終了後に累積獲得ポイントが0.3倍に減少する想定外の事象であるカタストロフを発生させ,リスク選好および時間選好に与える影響を解明する10期繰り返し累積ありBRET実験については,プログラムが完成しており,動作検証・予備実験なども実施しており順調に進んでいると言える. また,本研究で実施しているパネル実験およびオンライン実験の方法について整理し,書籍として出版する計画も進行しており,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
パネル実験については,現状のまま継続していく予定である.さらに,毎回の実験について,社会の状況を反映したり,研究として関連性の高い適切な質問項目を追加しながら進めていきたいと考えている.また,一定程度の成果が見えてきたことから,適切な学会での報告や論文投稿などアウトプットを加速していくこととする. オンライン実験についても基礎研究として実施してきたintro.jsを用いた研究について報告し,BRET法を用いたカタストロフ実験をはじめ,複数の実験を随時実施していく予定である.ただし,実験課題によっては,パネル実験が影響を与える可能性がある.具体的には,BRET法を用いたカタストロフ実験については,過去のBRET法を用いた実験への参加経験が影響を与える可能性があることから,データが影響を受ける可能性がある.その場合には,パネル実験に参加している参加者を除いて実験を行うなど,適当な工夫を行う必要がある.しかしながら,適切な対応が可能であり,実験参加者の確保をはじめ,研究の進行に支障ないと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,実験参加者が想定した人数に達しなかったことによる.クラウドソーシング実験では,実験参加者の一定の減耗が認められるが想定していた以上に減耗したことから,次年度使用額が生じてしまった.
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