研究課題/領域番号 |
22K18172
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 沙織 九州大学, 工学研究院, 助教 (20772320)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 細胞遊走 / 表面微小凹凸構造 / ハイドロゲル |
研究実績の概要 |
細胞の移動現象(遊走現象)は、生体内における恒常性の維持、様々な生理機能の発現、組織・器官の発生において基礎をなす機能である。細胞はその細胞が置かれた様々な外部環境に応答して、その遊走挙動を変化させている。例えば、基材に応じて細胞挙動を変化させることが知られており、最もよく知られている例は細胞が硬さの違いを感知し、より硬い領域へ遊走する指向性運動である。基材の硬さに応答した細胞の遊走挙動については、細胞をコントロールする基材の開発のためこれまで多くの研究がなされている。近年、細胞が基材の硬さだけではなく凹凸も感知して挙動を変えることが明らかになった。基材表面の硬さだけではなく凹凸もコントロールすることによって、より細胞の制御が可能になることが期待される。そこで本研究課題では、表面凹凸による細胞運動変化のメカニズムを解明することを目的としている。 これまでに我々は、表面に微小な凹凸構造が存在するハイドロゼラチンゲルを開発し、細胞が表面の微細凹凸構造の周期や大きさによって遊走挙動が異なる現象を見出した。 今年度は細胞の指向性遊走に関わる細胞内タンパク質の局在化を明らかにした。これまで細胞遊走の方向を決定づけていると考えられてきたタンパク質の上流に、プロテインキナーゼCαが存在していることが示された。これは凹凸構造による指向性遊走においても、方向決定のメカニズム解明の一助になりうると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゼラチンゲル上に微小な凹凸構造を形成するところまで確立できたが、現在自家蛍光により蛍光観察が出来ない状態である。この問題を解決するためには、架橋剤を変更して結合方法を変える必要がある。現在、新しい架橋剤の選定中である。
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今後の研究の推進方策 |
表面追加架橋処理の条件検討と最適化を行い、表面微小凹凸構造を導入する方法を確立する。その後は細胞をゲル上に播種し、長時間タイムラプスにより遊走挙動を定量的に評価すると同時に、遺伝子導入を行って細胞接着分子を可視化することによって表面微小凹凸構造に応答した細胞の指向性運動を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は消耗品、備品、機器などの値上げが相次ぎ、予定していた予算での購入が難しく、見送らざるを得ない状況が続いた。今年度は繰越分と併せて購入する予定のため、形状通り使用される見込みである。
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