呼吸によって変形する横隔膜および肺野は、その動き自体が疾患の情報を与える場合がある。代表者の研究実績は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を対象として二つのトピックに大別される:1)横隔膜運動解析;2)肺野局所運動解析。 1)横隔膜運動解析:肺野全域の中で横隔膜は最も著しい呼吸性変位を持つ。まず、胸部MR矢状面画像系列から横隔膜プロフィールの中点位置の運動波形を抽出し、その波形における呼吸サイクルの周期とピーク振幅の一様性の程度を検証した。次に、COPD患者の横隔膜運動の非連動性に着目し、複数の呼吸サイクルを利用して横隔膜の各位置の運動波形同士の類似度を算出した。最後に、COPD患者の横隔膜運動の制限性に着目し、複数の呼吸サイクルを利用して横隔膜運動波形の振幅の絶対値を算出した。また、多方向の横隔膜運動も評価した。 2)肺野局所運動解析:肺野内局所の呼吸性変位の取得を目標とし、まず、胸部4D-MRI(3次元の動画)の同期情報に基づいて目標の肺野領域を抽出して肺野4D-MRIを構築した。次に、肺野内の特徴点検出・マッチングにより、肺野全域にわたって変位ベクトル推定を行った。最後に、特定の肺野局所における平均変位ベクトルの大きさおよび角度変化を取得し、経時的かつ定量的な運動解析を達成した。 健常者と比較しながら、提案法によりCOPD患者における横隔膜および肺野運動の非連動性と制限性を評価した。それらの運動解析を通して、呼吸器疾患の早期発見、診断、および治療・リハビリテーションへのフィードバックを支援していく。
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