研究課題
肺癌の気管支鏡検査における末梢肺病変の確定診断率は、超音波プローブを用いる事により飛躍的に向上した。超音波画像から気管支と腫瘍の位置関係を明確にすることが可能となったためである。一方で、腫瘍が気管支内に露出していない場合は、超音波画像が得られていたとしても診断率は60%程度である。診断が不可能であった場合に、確証を持って再生検を行うには、腫瘍内部エコー所見が参考になる。超音波所見に関するこれまでの報告では、腫瘍内部エコー所見を3つのタイプ(6つのサブクラス)に分類し、末梢肺病変の良悪性を高確率で判別が可能である。このように気管支鏡で得られる超音波所見は診断の補助に非常に重要である。しかしながら、技術習得・精度にばらつきがあることから、AI(artificial intelligence)を用いることで超音波所見から良悪性を鑑別することを、容易にばらつきなくできないか検討する意義がある。よって、本研究でAI技術により、肺末梢病変の診断支援に利用できないか検討した。本年度は島根大学医学部附属病院 呼吸器・化学療法内科で過去に気管支鏡検査で得た末梢肺野病変の超音波所見を機械学習したAIを構築した。213症例を対象としAIを構築する事ができた。AIが超音波画像から、肺病変の良悪性を見極める正解率は83.4%(臨床医 68.4%)であった。精度の向上が今後も望まれるが、超音波画像からでもAIを構築することで、良悪性の判断が可能であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は肺末梢病変の診断を目的としてEBUS検査を施行した213症例を対象としAIを構築することができた(第62回呼吸器学会学術講演会 発表, Sci Rep . 2022 Aug 12;12(1):13710.)。さらなるAI機能向上のために、気管支鏡検査データの追加収集を行っており、次年度以降のAIl構築のためのデータ管理も概ね順調に進展している。
213症例を対象としAIを構築したが、良性疾患のデータが少なかったため、さらなる症例集積を行い、AI再構築を行う。研究進行中に見込める400症例の追加データからAIの計算精度を評価・高めていく。構築したAIに、気管支鏡検査前に収集が可能な情報を追加しAIの計算精度を評価・高めていく。具体的には、腫瘍マーカーにより組織タイプの判別が容易になると予想される。CT所見・喫煙歴・性別・年齢など遺伝子変異の有無の頻度に関わる項目が報告されており、超音波所見のみでなく多項目での検討を行う。超音波画像からの良悪性の判断が正確に実施可能なAIを構築したのちに、胸部CTデータや遺伝子変異情報を組み込み、更なる正診率の向上、ゲノム検査への応用を目指す。
COVD19流行のため、研究・学会活動の制限が続いたため、旅費・人件費の使用が全くありませんでした。物品費に関しても、データ解析のための解析ソフトなどは次年度以降に購入する予定としたため、次年度使用額が生じています。次年度以降に解析するためのデータ集積は本年度実施しているため、データ解析(物品費・人件費)に必要な費用を使用する予定です。旅費に関しては、引き続きWeb開催などを利用する可能性があります。
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Scientific Reports
巻: 12 ページ: -
10.1038/s41598-022-17976-5