研究課題
透析療法では内シャントと呼ばれる動静脈を吻合した血管が用いられる。しかし、内シャントは狭窄しやすい血管であるため、治療前の初期スクリーニングとして、聴診器による聴診法と、スリルを触知する触診法が行われている。これらは簡便で確実な方法であるが、次の課題がある。1.聴診器を皮膚に当てる強さや角度、聴取者でシャント音が異なるため再現性に乏しい。2.定性判定しかできないため、定量判定やデータの共有が難しい。3.接触感染に配慮する必要がある。これら既存法の課題を解決するために、カメラを用いた非接触撮像に注目した。初年度は、近赤外光、赤色光、緑色光、青色光を調べ、青色光が最適であることを明らかにした。次に、色相・彩度・輝度の色空間を用い、輝度による有効性を明らかにした後、皮膚で生じる乱反射雑音を除去するために、移動平均法の有効性とその最適カーネル数を明らかにした。一般的に臨床で言われている”スリル波形は乱流である”という事実に対して、”スリル波は乱流だけではなく規則的な波も含まれている”ことを明らかにした。これら基礎研究に基づき、輝度-階調変換による血流の可視化、フォトメトリックステレオ法による血管の立体画像化、聴診法の代用アルゴリズムを提案し、内シャントの基準範囲を求めた成果を、第34回日本臨床モニター学会総会で発表し「最優秀賞」を受賞した。さらに教師あり機械学習で正常と狭窄による2クラス分類で高い推定精度を実証し、国際会議IEEE ISMICTで発表した。ヒートマッピングを用いて狭窄部位を可視的に表現し、最終年度に同会議で発表した。スリル波の定量値から正常群と異常群で有意差を認め、この成果を学術雑誌MDPI Sensorsに原著論文で投稿した。以上の成果から、10秒程度の非接触測定で、内シャントを定量的に評価し、狭窄部位を可視化する新しい初期スクリーニング法の基礎研究を確立した。
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Ieeexplore
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MDPI Sensors
巻: - ページ: 1-4
10.1109/ISMICT58261.2023.10152043