ウイルスベクターの一つであるアデノ随伴ウイルス (AAV)は、侵襲性が低く搭載遺伝子の長期発現が可能であることから、難治性疾患治療薬として認可され注目されている。しかし、成人の大半はその中和抗体を持っているため患者が限定されること、大量投与による肝毒性が問題になっており、それらを回避する技術が求められている。本研究では、AAV搭載複合体を開発し、上記課題の解決を図る。具体的には、当研究室の独自技術である”混ぜるだけで自己会合する超分子複合体”にAAVを内包させることでAAV中和抗体回避能の向上を測る。その際に、この自己会合複合体を構成する材料の構造を最適化しつつ、AAV複合体の挙動の解明を行う。さらに、動物実験・細胞実験を通して目的箇所への効率的な遺伝子導入を検討する。 最終年度では、複合体化によるAAVの中和抗体耐性向上に関して、In vivo環境で検討を実施した。マウスにAnti-AAV9抗体を投与した直後にAAV9サンプルを投与したところ、AAV9単体では遺伝子導入がどの臓器においてもほとんど抑制された一方、複合体化することで、遺伝子導入量の減少幅が大幅に抑制された。さらに、複合体を形成する高分子の構造検討を実施したところ、ポリアミノ酸の長さを伸ばすことで、中和抗体耐性が向上することが確認された。このシステムはAAVの中和抗体による不活性化の問題を解決できる新規ナノテクノロジーとなる可能性が示された。
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