研究課題
本研究では、複数光子を連続放出するカスケード核種に着目し、核外電磁場との相互作用により変化する角度相関を測定することにより生体深部の局所環境情報も同時取得する新イメージング技術の確立を目指す。本年度は、1)Si/GFAG検出器を用いたPET/SPECT核種同時撮像の開発検証、2) SOI(Silicon on insulator)技術を用いたSi検出器の開発評価、3)パラレルホールコリメータとスリットホールコリメータによる二光子同時計測イメージング検証を行った。1)SOI技術を用いたピクセルサイズ36 umのSi検出器(XRPIX7)とGFAGシンチレータ検出器を用いたコンプトンPETハイブリッドカメラを構築し、SPECT核種である99mTcの140.5 keVの低エネルギーガンマ線コンプトンイメージングと18FのPETイメージングの同時撮像に成功した。さらに、高エネルギーガンマ線(511 keV,1274.5 keV)由来の反跳電子飛跡をXRPIX7を用いて観測することに成功した。2) 常温動作および大面積化を目指したSi検出器(XRPIX-X)の評価を進めている。動作速度および電源pad近傍でのX線分光性能が大面積素子XRPIX7よりも改善されていることを確認した。3)パラレルホールコリメータとスリットコリメータによる二光子同時計測イメージングの検証を行った。パラレルホールコリメータのみで構成した場合と比較し、検出効率が5.3倍向上した。また、提案手法を用いて、二光子放出核種である67Cuと111Inの高信号対雑音比(SBR: Signal-to-Background Ratio)同時イメージングおよび111Inのin vivoイメージングに成功した。
2: おおむね順調に進展している
1) SOI技術を用いたピクセルサイズ36 umのSi検出器(XRPIX7)とGFAGシンチレータ検出器を用いたコンプトンPETハイブリッドカメラを構築し、18F(PET核種)と99mTc(SPECT核種)の同時撮像検証を行った。散乱体にSi検出器を用いることで、99mTcの140.5 keVの低エネルギーガンマ線コンプトンイメージングと18FのPETイメージングの同時撮像に成功した。また、22Na点線源を用いて、高エネルギーガンマ線(511 keV,1274.5 keV)由来の反跳電子飛跡をXRPIX7を用いて観測することに成功した。以上の成果に対して国際会議で発表を行った。2)常温動作および大面積化を目指したSi検出器”XRPIX-X”の評価を進めている。まず、動作速度および電源pad近傍のピクセルのX線分光性能が大面積素子XRPIX7よりも改善されていることを確認した。一方で、電源pad遠方のピクセルでは分光性能が劣化しており、現在原因を追求中である。3) パラレルホールコリメータとスリットコリメータによる二光子同時計測イメージングの検証を行った。核種位置を面上に推定するスリットホールコリメータをパラレルホールコリメータの90度方向に配置することにより位置を1点に特定可能となる。まず、111In点線源を用いてパラレルホールコリメータのみで構成した場合と比較し、検出効率が5.3倍向上することを実証した。また、提案手法を用いて、二光子放出核種である67Cu(治療核種)と111In(SPECT核種)の高SBRな二光子同時計測同時イメージングに成功した。以上の成果に対して国際会議で発表を行い、学術論文として出版した。更に111In抗体を担癌マウスに投与し、測定時間2時間という現実的な時間で二光子同時計測法によるin vivoイメージングに成功した。
本年度は本提案手法に必要なイメージングシステムの開発・構築を行った。XRPIX-Xの基礎性能評価および分光性能劣化の原因の追及、また、SOIピクセル検出器による反跳電子飛跡計測システムの開発を引続き行い、コリメータレスな角度相関計測イメージングシステムの開発を行っていく。さらに、開発済のピクセルサイズ18 umのピクセルASICと同ピクセルサイズのSi検出器を貼り付けた新たなSiピクセル検出器の評価も行い、モンテカルロシミュレーションと合わせて固体検出器を用いた反跳電子飛跡計測型コンプトンイメージングの検証を行う。また、理化学研究所と共同で、局所環境情報取得に適した新規生体用カスケード核種の探索・製造、実測定による角度相関変化条件に関する基礎研究を進めていく。開発済のリング型GAGGピクセル検出器を用いてpHや化学形態の違いによるカスケードガンマ線の角度相関の変化を計測する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 7件)
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