研究課題/領域番号 |
22K18234
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
宮司 典明 福島県立医科大学, 保健科学部, 助教 (40903167)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | PET / lung cancer / data-driven / image blurring / respiratory motion / respiratory gating |
研究実績の概要 |
データ駆動型呼吸同期PET撮像(DDG)は呼吸性移動の影響を補正するため、肺がんの原発巣やリンパ節転移などの微小病変の早期発見に期待されている。しかしながら、DDGは患者の不規則な呼吸波形に応じた補正はされていない。PET画像の画質や定量性を担保するためには、患者個々の異なる呼吸波形や体型に適応する手法の確立が必要不可欠である。本申請研究は、推定された各被検者のあらゆる呼吸波形から安定したPET画像を得るための「データ駆動型呼吸同期(DDG)の最適化手法」を構築することを目的としている。われわれは、最新の画像処理技術であるMotionFree(AMF)を用いてDDGアルゴリズムの効果を検証した。特に、正常および不規則な呼吸運動に対するAMFの精度についてファントムを用いて評価した。 呼吸性移動を再現した自作のモーションプラットフォームにファントムを配置し、静止状態および4つの呼吸運動下でPET/CT画像を取得した。呼吸運動は、正常な正弦波形および呼気一時停止波形、不規則な振幅変化波形やベースラインシフト波形で再現した。AMFのデータ抽出パラメータである「width」を最適化し、モーションプラットフォームの入力波形とAMFで認識した出力波形の比較および呼吸運動に応じた画質の改善効果について評価した。 DDG-PET/CT画像は、呼吸運動の正確な波形を再現し、定量精度を向上させることが確認された。改善効果は呼吸波形によって異なり、呼気一時停止波形での改善が顕著で、不規則なベースラインシフト波形が最も微細であった。不規則な波形においてwidthパラメータを最適化することで、正常な呼吸波形に近い改善効果が得られることが明らかとなった。本申請研究が確立されることによって、肺がんの早期発見や経過観察の評価指標、鑑別診断精度の向上に寄与することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4つの呼吸波形の違いによるDDGの画質・定量評価は体幹部ファントムを用いて検証した研究成果は国際論文誌に掲載された(Ann Nucl Med. 2023;37(12):665-674.)。呼気休止波形を除くすべてのRecovery Coefficientは、静止画像よりも低い値を示した。改善率は,正常よりも不規則な動きでより低下した。PET画像の放射能濃度は、正常な動きに対してベースライン波形で有意に異なった。呼吸に応じたパラメータの最適化はベースライン波形でより効果が期待できる。また、体格による違いは大きさの異なる3種類のファントムを用いて正常な動きに対するDDGの画質・定量評価をおこなった(論文作成中)。PETデータ抽出パラメータを30%にすることで、日本のガイドライン評価基準に基づく検出性と定量的精度を提供できる。また、さまざまなDDGアルゴリズム(Advanced Motion Free, OncoFreeze AI, Auto-Gating, Digital self-gating)を用いた呼吸波形による影響と妥当性について、データ収集を実施している。以上のように本申請研究は実施計画を着実に進展させ、新たな知見も得られており、当初の研究実施計画に対しておおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究活動がおおむね順調に進展したことを受けて、2024年度以降も基本的には交付申請書の研究実施計画に即して研究を進めることを推進方法とする。すなわち、研究計画は開発したツールの妥当性の検証である。ファントム評価においては体幹部ファントムだけでなく、呼吸運動がより大きな横隔膜境界の動きについて検証を進め、臨床評価ではDDGを施行した肺がん症例を対象として従来画像と最適化した画像の違いを明らかにする。得られた結果を取り纏め、関連学会の学術大会及び主要学術雑誌において研究成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿中の論文が当初予定していた論文誌に掲載ができなかったために、オープンアクセス費用を翌年度分として請求した。
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