研究実績の概要 |
2022年度は,同種造血幹細胞移植 (Allogeneic hematopoietic stem cell transplantation : allo-HSCT, 移植日; day0) に用いた栄養パスにおいて得られた臨床指標より,以下のとおり種々な有益的な側面を報告した.〇allo-HSCTに用いた栄養パスにおけるストレスの度合いならびに前処置前の骨格筋量と2年非生存率との関連性: PLOS ONE 17(8) e0271728 2022,〇allo-HSCT前の体格指数(Body Mass Index: BMI)ならびにGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)と5年非生存率の関連性: Nutrition and metabolic insights 15, 2022,思春期・若年成人(Adolescent&Young Adult: AYA)世代に用いた栄養パスの妥当性ならびに転帰(5年非生存率)の関連因子: 学会誌 JSPEN 4(2) 52-62 2022, 〇標準体重症例を対象としたallo-HSCTに用いた栄養パスにおける基礎代謝熱量充足率のモニタリングとアウトカム[体重減少]の関連性:日本栄養士会雑誌,66(1):27-34,2023,〇allo-HSCTに最も患者の負担となる生着時(好中球<500)における栄養パスの有効性:日本栄養士会雑誌 66(3) 139-147 2023 2023年度は,allo-HSCTにおいて寛解を目指している骨髄破壊的前処置法(myeloablative conditioning:MAC)における一定期間中(前処置前からday42まで)の体重減少率と3つの推定必要エネルギー量充足率との関連性を明らかにした.日本造血・免疫細胞療法学会雑誌 12(4) 245-258 2023
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は自験例で得られた介入期間の中央値 (前処置からday42まで) の根拠ならびに移植ソース別の費用対効果を検討している.また,1年ならびに3年の転帰と臨床指標との関連性を探索する.栄養パスの妥当性を医療の質(Clinical Indicater: CI)に照らすために,寛解を目指すMACに用いた栄養パス(ストラクチャー)における3つの臨床指標(医療資源節減,有害事象への対応,転帰に関連する体重減少率を担保する栄養代謝のモニタリング)より評価し,その妥当性(アウトカム)を探索する.一方,allo-HSCT時の体重減少率と各推定必要エネルギー量充足率との関連性を間接熱量計に鑑みる研究を進めている[UMIN000052185].
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次年度使用額が生じた理由 |
allo-HSCTにおける体重減少の臨床指標 (食事誘導性熱産生,投与栄養量と方法,PS) の探索には安静時エネルギー消費量 (REE) と体組成 (BIA) の機器を要する.これらの機器は,人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の介入の定義にある「研究目的で,人の健康に関する様々な事象に影響を与える要因(健康の保持増進につながる行動及び医療における傷病の予防,診断又は治療のための投薬,検査等を含む.) の有無又は程度を制御する行為」の「検査」に該当するため,静岡がんセンター倫理委員会の審査を受けるための準備をしている.
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