研究課題/領域番号 |
22K18239
|
研究機関 | 日本保健医療大学 |
研究代表者 |
姚 潤宏 日本保健医療大学, 保健医療学部理学療法学科, 助手 (40909610)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 脳機能 / 運動視機能 / 認知症予防 |
研究実績の概要 |
研究代表者自身のこれまでの研究で効果が確認された振盪運動刺激を改良し、神経細胞に位相するTheta周波数の条件を検討設定する。さらにGammaリズムの視覚刺激とTheta周波数の振盪刺激を組み合わせた新規ポリリズム他動運動負荷装置(PTMD: Visual Stimulus combining Shaking Stimulus Polyrhythm Transitive Motion Device)を開発する。 これまでに装置の運動効果と安全性については被検者10名に対し、Theta周波数の振盪運動を介入、振盪運動の単独の試運行状況の確認を行った。Gamma周波数の光刺激を行い、かつ各評価用機器を用いて観測し、運動視機能と大脳の活動性については現在分析中である。運動機能・認知機能・視覚機能に異常のない20~22歳の若年者10例、60~70歳の高齢者10例を対象として、介入群5名、対照群5名を群分けた単独実験の結果を以下に示す。 ①介入群の被験者10名のうち8名が、足先部の荷重が増加、軌跡長が有意に短縮した(p<0.05)。Theta周波数の振盪運動により重心動揺に改善傾向が認められた。 ②高齢者は眼球運動(サッカード潜時と精度)が若年群と比べ有意に低下していた(p<0.05)。また、高齢者にGamma周波数の光刺激を行なった結果、歩行時の視野が広くなり、視機能は3ヵ月で約7%向上した。大脳周辺抑制機能の判別性は5%が改善された。 これらの結果から,高齢者であっても振盪運動や視覚刺激を単独で行うことで身体、認知、運動視機能は改善することが示唆される。PTMD運動を実施することで振盪運動と視覚刺激の相乗効果が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主に研究機器の整備、研究対象の決定、研究環境の整備への取り組み、本研究を開始する前に予備実験を実行する。 研究代表者は所属する日本保健医療大学研究倫理・利益相反委員会の承認を得た(P2018-04)。また、協力施設(関東メディカル・ケアのフローラグループ半日リハビリデイフローラ岩槻)との連携を構築しており、研究協力者に本研究協力の同意を得た。研究協力施設の医師、看護師による被検者の選定の協力を仰ぎ、施設の利用者にMMSE初歩検査を行い、22~26点を示した35名(研究に参加意欲がある者)を選定した。また、身体機能、認知機能、運動視機能の測定のための機器備品はすでに導入済みである。 工学分野専門家からアドバイスを受け、ヒトに応用するため安全が確保され、施設実装が可能な運動負荷装置の設計・改良・開発を行っている。従来の振盪装置に光・色などの視覚刺激を組み合わせ、PTMDの開発作製を完成する。かつ運動の有効性とリスクを考慮し、3か月間程度で試運行状況を観測する。Tobii Glasses(Tobii Glasses2/Tobii Technology K.K.)機器を用いて、視覚追跡運動機能の試行は測定済みであり、大脳MT野と初期視覚野の活性(Center-surround-suppression)を評価するため、運動する垂直正弦波格子の測定ソフトウェアのプログラミングを行い編成は完成している。研究期間中、対象者の健康安全に配慮し、InBody機器(InBody470/ InBody Japan)を準備し、経時的体組成の変化を観測可能にして行って来た。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度から本研究である運動介入に進み、PTMD運動効果を検証する予定としている。 開始時(0ヶ月)、前期(4ヶ月)、後期(8ヶ月)、終了時(12ヶ月)後に以下の項目についてそれぞれ測定する予定である。 身体パフォーマンス測定:Tobii Glasses(Tobii Glasses2/Tobii Technology K.K.)により視覚追跡運動機能を測定する。MMSE検査により認知パフォーマンスを評価する。Timed up & go テスト(複合的動作能力)と5m歩行 (移動の能力)時間を記録し、ADL・身体機能を測定する。また、重心動揺計(GW-5000, anima)を使用し、姿勢制御機能を測定する。二重課題Dynamic gait index方法に従い、脳-身体総合応用能力を評定する。刺激効果およびメカニズム探索:非侵襲的に生体内の酸化ストレスを評価する尿中8-OHdG/クレアチニンの測定(日本老化制御研究所 JaICA)。運動する垂直正弦波格子(空間周波数 0.5 c/deg)を用いて、運動刺激に対する視感度を測定する。Center-surround-suppressionと言われる視覚神経細胞の受容野メカニズムを利用した大脳MT 野と初期視覚野機能の反映について検査を行う。生体信号測定システム(EEG-1250, nihon kohden)により骨格筋活電位を記録、脳から生じる電気活動を測定し、筋肉振動子と神経同調の状況を分析する。近赤外分光計測 (NIRS: Near Infrared Spectroscopy)(HOT-2000, NeU)による生体信号測定と同時に脳活動に伴う血流変化を oxy-Hb と deoxy-Hb の濃度変化として観察する。血中ホモシステイン酸の変化を追跡調査し、認知症の進行を定量的に観察する(日本老化制御研究所 JaICA)。
|
次年度使用額が生じた理由 |
姿勢制御機能を測定する重心動揺計(GW-5000, anima) 生体信号測定システム(EEG-1250 , nihon kohden) 重心動揺計は身 体制御機能の計測するのため、必要となる。 生体信号測定システムは筋肉活動、脳皮質活動に必須である。
|