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本研究は,ヒトの立ち上がり動作において発揮される下肢大腿部の二関節筋の機構的役割,特に大腿直筋に着目し,その構造的・機能的特性を明らかにすることを目的とした.体幹を鉛直方向に規制しない自然な立ち上がり動作を対象として筋電図学的解析をおこなった結果,主働筋は膝関節の一関節伸筋および股関節と膝関節にまたがる大腿直筋であることが明らかとなった.次に,これら筋の力発揮による関節モーメントの寄与を理論モデルによって解析したところ,体幹の前傾を支える力には膝関節の一関節伸筋が大きく関与する一方,大腿直筋は直接的な寄与を示さなかった.しかし,床反力を常に重心方向に向けて調整する平行リンク機能に着目し,大腿直筋の機能を模擬する平行リンクWe3およびWf3をワイヤとして装備した実機モデルを構築し,実験的に検証をおこなった.モデルは関節Kの屈曲角度をθK=90°とし,そこから蓄積されたエネルギを解放することで立ち上がり動作を再現した.この際,60msごとに取得したスティックピクチャおよび歪みゲージから張力波形を解析したところ,動作初期では後面の二関節筋に相当するWf3の張力が優位であり,動作が進行し膝関節が伸展するに従い,前面の二関節筋に相当するWe3の張力が増加することが確認された.この結果は,大腿直筋が平行リンク構造として働き,踵部に発生する床反力の方向を常に重心方向へ制御していることを示唆する.さらに,大腿直筋の筋収縮力は力の出力としてではなく,構造的な張力として貢献しており,従来のように股関節の一関節伸展筋に依存せずとも立ち上がり動作を成立させる新たな運動戦略の可能性が示された.以上の結果より,大腿直筋の平行リンク機能は,膝関節の一関節伸筋のみの駆動力で立ち上がり動作を可能とする革新的な機構特性を有していることが明らかとなった.
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