研究課題/領域番号 |
22K18251
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森先 一貴 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (90549700)
|
研究分担者 |
西岡 佑一郎 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 准教授 (00722729)
出穂 雅実 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (20552061)
日下 宗一郎 東海大学, 人文学部, 講師 (70721330)
木村 淳 東海大学, 人文学部, 准教授 (80758003)
菅 浩伸 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (20294390)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2026-03-31
|
キーワード | 旧石器時代 / 瀬戸内西部 / 水中考古学 / 資源開発行動 / 人類生態系 |
研究実績の概要 |
日本列島は完新世の海水準上昇に伴い広範囲が海没したため、人類の主要な生活の舞台であった瀬戸内地方などは、陸域の限られた資料に歴史叙述を頼らざるを得ないという弱点があった。そこで本研究は、水中考古学的手法によりこの海域に直接アプローチし、海底地形データを得るとともに、水中であるが故に良好に保存された海底引き揚げの更新世動物遺存体の化学分析によって当時の生息環境に関する情報を追加する。併せて、陸上遺跡から得られた石器の分析により人類の技術及び資源開発行動を明らかにし、古環境データと統合することによって、これまでの瀬戸内地方、さらには日本列島の旧石器時代研究の弱点を克服することに挑戦することが本研究の目的である。研究課題のフィールドは芸予諸島を中心とした瀬戸内西部である。 2022年度は、陸域においては研究の中心的な対象資料である愛媛県今治市伯方島の金ヶ崎遺跡旧石器資料の再整理作業に着手した。資料は約1200点あり、この全ての計測、石材・器種分類による石器組成確認を完了した。また石器石材の産地推定に関する分析についても概ね完了させた。 また、遺跡隣接地の海底化石産出地についてマルチビームによる地形測量を本年に優先的に実施することとし、実行した。それとともに瀬戸内海全域の海底地形図を取得してGISによるマクロ・ミクロの海底地形復元を実現した。海底引き揚げの化石についても、今治市村上海賊博物館所蔵品について、台帳作成と計測作業を進めるとともに、一部の資料からコラーゲンサンプルの取得を試み成功した。今後、年代測定や同位体分析を通じて、こうした動物の生息年代や行動生態について重要なデータの獲得が十分期待できる成果をすでに蓄積した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度である2022年度において、陸域の分析対象遺跡の整理作業の過半の作業を終えただけでなく、そこから得られる情報についても従来にない画期的データとなっている。また、海域についてもマルチビームによる海底地形探査を優先的に実行してこれを完遂し、取得データの点検と加工を残すのみである。また海揚がり化石の整理・分析作業、化学分析についても当初の予定を遥かに上回る進捗状況と成果を上げた。これらのことから、当初の計画以上の進捗にあるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度には、陸域では中心的な分析対象資料である金ヶ崎遺跡旧石器資料の分析の図化作業を行うが、これを3D計測で実施する準備に着手しており、実際の計測データ整理を年度内に完遂見込みである。石材の由来に関する分析は予定を早めて他の遺跡にも敷衍し、積極的に研究の拡大を図ることとしたい。海域でも海底地形探査データの調整が終了する見込みであり、GISデータに結合して瀬戸内海のかつての地形をマクロに復元すること、金ヶ崎遺跡直下の現状地形を確認することを合わせて年度内に完了させる予定である。化石分析は今治市所蔵品については2023年度にさらに分析対象を拡大し、さらにデータの重要性を向上させることを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19による行動制限をうけ、当初予定研究項目のうち、マルチビームによる海底地形探査の完遂に注力したため、他の項目について一部先送りし、これらに要する旅費や委託費を次年度使用としたため。この一部変更をうけても、所期の目標を上回る成果が得られている。
|