• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

軽元素及び重元素同位体イメージングが切り拓く新しい太陽系起源物質の評価方法

研究課題

研究課題/領域番号 22K18280
研究機関京都大学

研究代表者

伊藤 正一  京都大学, 理学研究科, 准教授 (60397023)

研究分担者 平田 岳史  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10251612)
辻本 拓司  国立天文台, JASMINEプロジェクト, 助教 (10270456)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2026-03-31
キーワードSIMS / 同位体 / イメージング / 軽元素 / 重元素 / 隕石 / 太陽系起源
研究実績の概要

太陽系はいかにしてハビタビリティー(生物存在可能性)を獲得できたのか?この未踏課題に初めて答えを与えるのが銀河内での太陽系の大移動モデル(銀河大移動論)である.このモデルの検証には46億年前に太陽系が銀河内のどの場所、環境で誕生したかを物質化学的に調べる必要がある.その目的に最適な試料は、始源的な隕石に普遍的に含まれる微粒子集合体中の太陽系形成以前の星屑である.しかし、この微粒子は、その小さなサイズにくわえ、存在頻度が非常に低い(1-10ppm以下)ため、これまで誰も十分な数の粒子から物質科学的な情報を引き出すことができなかった.そこで本研究では、隕石中の膨大な数の粒子集合体から、星屑の微粒子を世界最高性能の超高感度元素・同位体イメージング分析手法を適用し、太陽系形成以前の情報を保持する微粒子から元素・同位体情報を引き出す.R4年度は、従来の二次イオン質量分析計に付属した同位体イメージング検出部の感度向上を目指し、超高感度なCMOSカメラを導入し、光子1個から測定可能な低バックグラウンドな環境下で測定可能であることを評価することに成功した.その結果、これまでの定量イメージングにおけるダイナミックレンジ2-3桁から3-4桁と大幅に向上し、露光時間1msから10分までの定量性を評価することに成功した.分担者平田と開発した隕石マトリクス中の超微粒子の一粒一粒の元素及び同位体情報をICP-TOF、MC-ICP-MS分析により明らかにし、現在論文投稿中である.分担者辻本は、星の移動を考慮した銀河化学進化に関する論文を報告した.また、 はやぶさ2により持ち帰られたRyuguリターンサンプル試料の化学分析班員として参加し、太陽系の始原物質の化学的評価を行うことに成功した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、高感度な局所同位体イメージングを隕石物質に適応するための手法の開発を行い、1.SIMSによる軽元素同位体イメージングの超高感度化に成功し、2.ICP-TOF-MSによる超微粒子の一粒一粒の元素、同位体情報の超高速高感度分析手法の開発に成功した.本来十年はかかる手法開発ではあるが、採択以前から約7年間分担者平田と共同開発を進め、ノウハウを適応することに成功することができた.ポストコロナ時代の物流の低下による納期の長期化、価格高騰などにより以前厳しい状況ではあるが、本研究の強みは、メーカに頼らず自分たちによって開発を進めてきた実績もあり順調にすすめられている見受けられるため、順調に進展していると評価した.開発した分析手法を適応するのに適した地球外物質に適応する際に、太陽系の基準となる物質であることを改めて再評価することに成功したCIコンドライト隕石及びRyuguリターンサンプルの初期化学分析結果も同時期に報告することに成功し、本研究により開発した分析手法を適応する隕石物質の選定を行う上でも重要な成果であると評価している.

今後の研究の推進方策

開発に成功した約10数ミクロンサイズの微粒子のSIMSやICP-MSによる超高感度な軽元素及び重元素の元素、同位体分析手法を隕石等のマトリクスに適応し、これまでの全岩化学組成の情報と比較し、超微粒子からみた太陽系の化学的、同位体的特徴の再構築を目指す.具体的には、これまで研究を進めてきたCV3 コンドライト隕石であるNWA7865,NWA7678、Vigarano及びAllende中の微粒子に対して、ウランを用いた水質変質の評価、岩石学的、鉱物学的情報を元にした変成度を組み合わせ、隕石母天体における再平衡による均質化の有無の影響を考慮し、開発した分析手法を適応することで、熱的な化学平衡などをもとに太陽系前駆物質してしられる同位体異常物質の存在度の比較などを行っていく.

次年度使用額が生じた理由

京大伊藤は、当該年度に使用予定であった二次イオン質量分析計に付属している冷却ステージの改良が納期が三月までに完了しないことが判明したため、次年度予定していた同位体イメージング検出器の高感度化を初年度に行い、次年度に冷却機構を付属したステージの高精度可変機構を加える改良を行うことにした.分担者辻本は、予定していた旅費の使用予定を変更し、次年度以降に変更した.当初予定していた計画を変更したが、同位体イメージングの高感度化に予定よりも早くに成功したため、これら手法を組み合わせ、次年度以降にステージ改良を行うことで計画通り順調に進めることができると評価される.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件)

  • [雑誌論文] Samples returned from the asteroid Ryugu are similar to Ivuna-type carbonaceous meteorites2023

    • 著者名/発表者名
      Yokoyama T.、Nagashima K.et al.(Itoh S.)
    • 雑誌名

      Science

      巻: 379 ページ: 786~795

    • DOI

      10.1126/science.abn7850

    • 査読あり
  • [雑誌論文] From Galactic chemical evolution to cosmic supernova rates synchronized with core-collapse supernovae limited to the narrow progenitor mass range2022

    • 著者名/発表者名
      Tsujimoto T
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 518 ページ: 3475~3481

    • DOI

      10.1093/mnras/stac3351

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Oxygen isotopes of anhydrous primary minerals show kinship between asteroid Ryugu and comet 81P/Wild22022

    • 著者名/発表者名
      Kawasaki Noriyuki、Nagashima Kazuhide、Sakamoto Naoya et al.(Itoh S.)
    • 雑誌名

      Science Advances

      巻: 8 ページ: 1~10

    • DOI

      10.1126/sciadv.ade2067

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Contribution of Ryugu-like material to Earth’s volatile inventory by Cu and Zn isotopic analysis2022

    • 著者名/発表者名
      Paquet Marine、Moynier Frederic、Yokoyama Tetsuya et al.(Itoh S.)
    • 雑誌名

      Nature Astronomy

      巻: 7 ページ: 182~189

    • DOI

      10.1038/s41550-022-01846-1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ryugu’s nucleosynthetic heritage from the outskirts of the Solar System2022

    • 著者名/発表者名
      Hopp Timo、Dauphas Nicolas、Abe Yoshinari et al.(Itoh S.)
    • 雑誌名

      Science Advances

      巻: 8 ページ: 1~10

    • DOI

      10.1126/sciadv.add8141

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Solar System calcium isotopic composition inferred from Ryugu samples2022

    • 著者名/発表者名
      Moynier F.、Dai W.、Yokoyama T.、et al.(Itoh S.)
    • 雑誌名

      Geochemical Perspectives Letters

      巻: 24 ページ: 1~6

    • DOI

      10.7185/geochemlet.2238

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi