研究課題/領域番号 |
22K18281
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
荒川 政彦 神戸大学, 理学研究科, 教授 (10222738)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | マグマオーシャン / 分化溶融微惑星 / 天体衝突 / 衝突クレーター / コンドリュール / 水星核 |
研究実績の概要 |
本年は、昨年度開発した斜め衝突用火薬ガス銃の試射と改良を行った。直径7mmのポリカ弾丸を1.5km/sまで加速できることを確認しているが、目標の2km/s以上には達していない。また、サボ分離による直径3mm以下の弾丸の発射実験も行ったが、実用には至っていない。 この研究では、岩石・金属溶融装置を開発するために高周波誘導加熱炉を導入する予定であるが、その予備実験として低融点金属(ハンダ)とパラフィンを用いた2層構造標的への衝突実験を行った。電熱ヒーターにより、パラフィン・低融点金属を両者が液体となる100℃程度にまで加熱した。そして、標的が重力成層した状態でガラス弾丸を自由落下により、数m/sで垂直衝突させた。この様子を高速ビデオカメラにより、水平方向及び真上から観察して、上層のパラフィン層及び下層の低融点金属層でのクレーター形成過程を観察した。 この結果、クレーターキャビティー(直径)の成長は、このキャビティーの下方向の成長が続く限り継続することがわかった。キャビティーの深さ方向の成長が、浮力により止まり、浅くなり始めるとキャビティーの直径も減少する。キャビティーの最大直径と弾丸運動エネルギーはべき乗の関係にあるが、均質パラフィン層で最もクレーターは大きくなり、均質低融点金属層や2層構造標的では、それよりも小さくなった。πスケール則によりスケーリングすると2種類の均質標的はスケーリングできた。これは標的密度の差がクレーターサイズに影響を与えるからだと推測される。一方、2層構造標的では、クレーター直径は、下層の低融点金属層に制御されているように見える。また、クレーターリムはイジェクタが再堆積することで発生することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的を達成するために4項目の課題を実施する予定であった。初年度と二年度は(1)岩石・金属溶融装置の開発と(2)斜め衝突用実験装置の導入を中心に実施しすることにしていた。三年度目と四年度目には(3)マグマ上への斜め衝突実験の実施、(4)鉄・岩石分別作用とコンドリュール形成モデルの構築を予定している。初年度は(2)を中心に実施したが、衝突装置の立ち上げが終わっていないので、今年度も(2)を継続して実施した。その結果、現在、サボ分離には成功しているが、銃身のアライメントが合っていなので、サボが標的まで来て衝突している。また、現時点では、火薬の燃え残りが多く、それが標的にぶつかる状態にある。 衝突装置の開発が遅れているため(1)用の装置の購入も遅れている。そのため(3)の実験を、パラフィンや低融点金属などの模擬試料を用いて低速度において開始した。
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今後の研究の推進方策 |
遅れている衝突装置の立ち上げを早急に実施する。火薬の種類を変更して燃え残りを減らし、銃身のアライメントの調整を進めることでサボ分離技術を完成したい。また、使用する火薬の種類を変更することで目標とする2km/sを超える高速度での衝突実験を目指す予定である。同時に初年度に予定していた岩石・金属の溶融装置(高周波誘導加熱炉)を導入し、衝突実験用のチャンバーに実装する。そして、それらを利用した衝突実験を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
衝突実験装置の立ち上げの遅れにより、岩石・金属用の溶融装置の導入が遅れている。これが次年度使用額が生じた理由である。新規開発の装置であるため、多くの不具合を解決しながら研究を進めている。今年度には、溶融装置を導入して、実験装置を完成する予定である。また、実験の遅れから学会発表等の出張や海外からの研究者の招聘ができなかったのも次年度使用額が生じた理由である。
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