研究課題/領域番号 |
22K18284
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
奥村 大 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70362283)
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研究分担者 |
永島 壮 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80800317)
松原 成志朗 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (40823638)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 固体力学 / 材料力学 / 分岐座屈 / ゲル / 高分子合成 / 不安定変形 / パターン変態 / 形態制御 |
研究実績の概要 |
本研究では,摂動解析の動的非線形化による凸凹パターン変態の全貌解明を目的とする研究課題に取り組んでおり,今年度の研究業績は以下のようにまとめられる.摂動解析の動的非線形化の研究項目について,この手法を用いて,リンクル開始点からクリース開始点に繋がる不安定経路の存在を明らかにし,国内会議だけでなく,国際会議での発表を米国機械学会の主要な講演会であるIMECE2023で行い,不安定変形を専門とする研究者から高い評価を受けた.固体と構造の力学問題で伝統のあるInternational Journal of Solids and Structuresにも掲載された.この成果によって,リンクル・クリース間のこれまでの謎の大半は解決された.研究をさらに発展させることを考えるとき,表面張力との相互作用によってクリースの発生や寸法といった特徴量は影響を受けるため,表面張力を考慮した実験や評価が重要となる.連成した手法ではないが,表面張力の影響を考慮した評価手法を構築し,クリース発生における物理と計算の側面についてもInternational Journal of Solids and Structuresに論文投稿し採択されている.さらに,プレパターンを用いた3次元凸凹パターン変態の評価・観察手法構築の研究項目では,ゲル化過程のダイナミクスに基づくパターン変態観察手法を用いた研究が発展しており,3次元プリンタによって生物の軸索構造を模倣するための型を作成し,基盤・軸索・膜で構成されるハイドロゲル構造体を作成しての実験観察を行っている.統計的な手法を用いて良好な結果が得られており,論文化に近いところにいる.そのほかにも,表面張力を駆動力とするパターン変態の実験と計算を進めており,想定以上に研究内容は幅広く展開しており,これまでにない表面制御機構の達成のための研究基盤構築は進んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究業績の概要に記載したように,研究課題は予想以上に順調に進んでいる.とりわけ,摂動解析の動的非線形化による孤立クリースの基礎的解析に成功しており,連鎖反応モデルを構築することによって,その特徴の説明を可能としたことは重要である.これまで未解明であった分岐座屈としてのリンクルと非線形分岐座屈と解釈されていたクリースの間の不安定変形や変形経路が明らかとなり,力学的に整合した理解が可能となった.この達成によって,本研究課題の最もコア部分の課題は解決された.現在は表面張力との相互作用の解析に取り組んでおり,単純な場合にはすでに成果があがっており,軟質体の非線形性が増す場合の影響について近々論文投稿する予定であり,異方性の影響についても解析を着手する予定である.これらは申請者らの極めて独自性の高い成果と研究計画に基づいている.実験についても,3次元プリンタを用いたハイドロゲルの複合構造体の作成のノウハウが蓄積されつつあり,再現性のあるパターン変態の実験観察ができるようになりつつある.今後に多様な展開を期待して継続して取り組んでおり,進捗状況は当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として,3年目の最終年度は研究をさらに挑戦的に発展させることを考える.実験サイドとしては,プレパターンを用いた3次元凸凹パターン変態の評価・観察手法構築の研究項目に関連して,導入した超微細3次元プリンタを用いて作成したゲル複合構造体と結果として生じるパターンの間の関係を明らかにし,制御可能となるような影響因子や因果関係を明らかにする.工学応用を考え,所望のヘリンボンパターンを発現させるための制御機構の試行を進める.そのサポートとして,先述したように計算力学的な進歩は達成されており,援用することによって研究を加速させる.相乗効果はすでに得られており,さらに発展させることを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費の決算のタイミングが合わず次年度使用額が発生した.比較的少額ではあるが,次年度の消耗品費に計上して有用活用する.
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