研究課題/領域番号 |
22K18287
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮内 雄平 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (10451791)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
キーワード | 太陽光吸収 / カーボンナノチューブ / 複素屈折率スペクトル |
研究実績の概要 |
本研究では、太陽光による水などの透明熱媒体加熱において、近年の量子ナノ物質科学の成果に基づき、より低い集光度でより大きなエネルギー流束による急速熱媒体加熱を可能にする新概念を開拓することを目指して研究を進めている。本年度はまず、太陽光吸収材料として想定している単層カーボンナノチューブ(CNT)薄膜において、垂直方向からの太陽光入射だけでなく、あらゆる方向からの太陽光入射に対する光学応答を理解し、素子として設計可能なものにするため、角度・偏光分解光学測定系を構築し、薄膜の広帯域複素屈折率スペクトルの決定を行った。その結果、本研究で作製したCNT薄膜は、薄膜を構成する一本一本のCNTが面内二次元配向を持ち、それぞれのCNTの持つ強い光学異方性は、マクロスコーピックには、薄膜面に垂直な方向と、面に平行な方向の、異なる屈折率として観測されることがわかった。角度依存の光学スペクトルは、これまで知られていた面内方向の複素屈折率だけでは再現できず、面直方向の複素屈折率の重要性が示唆された。また、本年度は、低集光での太陽光吸収において大きな問題となる、中遠赤外領域の不要な熱放射の発生を防ぐための、CNTの分離精製方法について検討を進めた。これまでの界面活性剤を利用する方法だけでなく、ポリマーを利用する方法など、様々な分散精製方法を検討した結果、中遠赤外領域の放射率を抑制可能なCNT分離精製方法とパラメータを特定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に沿って、単層カーボンナノチューブ薄膜を作製し、3次元的な素子設計に向けて面内及び面外方向の複素屈折率スペクトルを決定できた。一部使用予定の装置の故障などがあったが、中遠赤外領域の不要な放射率を除去する方法についても一定の目処が立っており、大きな遅延なく次のステップに進めると考えられることから、概ね順調とした。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に、単層カーボンナノチューブ薄膜の面内方向と面直方向に関する複素屈折率スペクトルを決定したので、そのデータを用いてシミュレーションを行い、最適な膜厚を決定し、素子を作製する。その素子を用いて、計画に沿った実験を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度の検討の段階においては、予算の効率的な活用のため、まずはシミュレーションや現有設備を逐次流用して見極めのための各種検討を行ったため、物品費の使用額をある程度抑制できた。また、研究に使用予定であった米国製近赤外検出器の故障があり、本国に送付し修理費用の見積が出るまでの間、一定金額の執行を差し控えた。その影響で、次年度に納期がずれ込んだ高額物品等もあり、次年度使用額が生じた。結果として故障した機器の修理費用については無償修理の対象となったため、今後の計画に支障はない。研究期間の後半ほど、実験の規模と頻度が増すため、期間後半に使用する金額が増加する見込みである。
|