研究課題/領域番号 |
22K18292
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
土方 泰斗 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70322021)
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研究分担者 |
松下 雄一郎 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (90762336)
大島 武 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 量子機能創製研究センター, センター長 (50354949)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 炭化ケイ素(SiC) / もつれ光子対 / 単一光子源 / MOS界面 |
研究実績の概要 |
第一原理計算を駆使して3準位系を有する表面SPSの欠陥構造を特定し,その形成エネルギーの計算から欠陥形成に適した酸化プロセスを構築していく.応募者らが過去に行った酸素関連欠陥の形成エネルギーの計算結果よると,最表面Siサイトに酸素が入った欠陥(OSi(1))は3準位系を有し,酸素化学ポテンシャルの高い領域で形成エネルギーが低いため,十分な酸素供給量を有する雰囲気(高圧酸素雰囲気下等)での酸化を行うことで優先的に形成されると予想される.本年度ではこのことを検証するため,酸素圧を変えて表面SPSを形成したいくつかの試料を用意し,それぞれの試料に対し多数の発光点の発光スペクトルを取得し、統計処理を行う.なお,PLスペクトルは可視域と赤外域の両方で取得し,3準位系SPS形成を検証する.なお,表面SPSの観察には研究室既存の共焦点蛍光顕微鏡を用いる. 酸素圧を0.3-2atmまで変えて試料を作製し,それぞれの試料で多数の表面SPSと思われる発光点の発光スペクトルを測定したところ,0.3-1atmでは発光スペクトルに関しては特段の差異は見られなかったが,唯一2atmの場合で可視域でのスペクトル強度が弱いという結果が得られた.なお,PLマッピングや光子相関測定から得られる発光強度は他の圧力と遜色はないため,2atmでは今回観測しなかった長波長側で発光していたことが示唆される.このことは,第1原理計算によって指摘された3準位系SPS形成を裏付ける結果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた赤外域の発光スペクトル測定が次年度に持ち越しとなったため,一部計画に未達の項目がある.この理由は,機器専用ソフトウェアにおいて新たに導入した赤外分光器の波長校正に不具合が発生したためであるが,次年度冒頭には問題は解決し,データ取得に着手している.
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今後の研究の推進方策 |
まずは酸素圧2atmの試料に対し,赤外域PLスペクトルおよびPLマッピングを実行し,3準位系SPS形成を検証する.3準位系の確認後,カスケード光放出に伴うもつれ光子対生成の検証を行う.ここで,まずは光励起によってもつれ光子対の確認を試みるが,光子対の放出方向が基板に対し互いに反平行になる場合が考えられる.そこで,試料裏面から放出された光子についても収集できるよう共焦点蛍光顕微鏡を改造する.量子もつれの検証には量子状態トモグラフィ法を用いた光子相関測定により執り行う. もつれ光子対が観測された暁には,これをLED等のダイオードに導入し,もつれ光子対の放出および量子状態の電子制御に挑戦する.ここで,SPS荷電状態や発光波長の制御が必要な場合,MOS界面での空乏層形成によってフェルミ準位やシュタルク効果を発する内部電界の制御を行う.そして,世界初の室温電子駆動もつれ光子対発生デバイスの実現を導く. 量子ビットは光子の偏光状態で表現される.そこで,表面SPSから発せられた単一光子・もつれ光子対の偏光状態を偏光解析の手法に基づき解析する.その際,偏光パラメータを高速で取得するデータ処理方法が必要となるが,偏光解析で培ったHadamard解析等を転用して解決を図る.
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