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2022 年度 実施状況報告書

MOSトランジスタ構造を基盤としたシリコン超伝導

研究課題

研究課題/領域番号 22K18294
研究機関静岡大学

研究代表者

小野 行徳  静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (80374073)

研究分担者 堀 匡寛  静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (50643269)
影島 博之  島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (70374072)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2027-03-31
キーワードシリコン / MOSトランジスタ / 超伝導 / 平坦バンド
研究実績の概要

LOCOSプロセスを利用した2次元周期配列構造の形成プロセスの検討を行った。LOCOS形成後のエッチングでエッチング液であるHFの染み込みが大きく、微小なパターンの形成が難しいことが判明した。このため、2段階熱酸化法に手法を変更し、微細パターン形成を再検討した。その結果、問題なく微細構造が形成できることを確認した。2段階熱酸化法により形成された2次元周期凹凸構造を有するMOSトランジスタを作製し、良好なトランジスタ特性が取得できることを確認するとともに、凹凸パターンにより移動度が変化することを見出した。また、Sicon-on-insulator(SOI)基板上に作製した2次元周期穴構造を有するMOSトランジスタを作製し、その移動度の温度依存性を調べた。この結果、低温にて移動度が著しく低下することを見出した。
超流動の発現を念頭に、電子・正孔2層系のクーロンドラッグの検討を行った。SOI膜厚の依存性を調べ、通常のフェルミ気体の理論に比して膜厚依存性が弱いことが見いだされた。また、トランジェントなゲート電圧制御による電子・正孔2層系の形成手法に関して検討を行い、電子、正孔密度が制御できること、等を見出した。また、2次元電子系におけるスピン状態を調べるためのEDMR法に関して、その感度向上のための手法を考案し、その基本原理を確認した。さらに、有効質量変化を観測するための磁場印可計測を開始した。通常のMOSトランジスタを用いて、良好なシュブニコフ・ドハース振動が観測可能であることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2次元周期的構造の形成プロセスは、その骨格をほぼ確立することができた。また、作製したデバイスを低温下にて測定し、移動度の低下等、周期的配列構造の影響とみられる特性変調も観測することができた。特に、初年度に予定していたデバイス試作が問題なく完了でき、良好な基本特性が得られていることから、今後、順調に測定が進展するものと期待できる。
新たに、超流動の発現を念頭に、電子・正孔2層系のクーロンドラッグの検討を行った。基本的な測定条件の抽出等を完了し、通常のフェルミ気体の理論では説明ができない特性が観測されるなど、新たな可能性を秘めた特性が得られている。スピン計測用のEDMRに関しては、新たな感度向上手法を提案し、その基本原理を確認するなど、順調に推移している。

今後の研究の推進方策

2次元周期的構造の形成プロセスに関しては、その骨格をほぼ確立することができたことを受け、幾つか残っている問題点を解決するための検討を行う。第一に、現在、80nm周期である構造を40nm周期に微細化するための電子線描画の最適化を検討する。第二に、バックゲートに対する耐圧が低いため、これを改善するためのプロセスの改良を検討する。
低温下にて移動度の低下を観測した周期的配列構造を有するMOSFETに関しては、パターン周期依存性の詳細解析から、平均自由工程を算出し、必要となる2次元周期配列構造のサイズを明らかにし、次期試作にフィードバックをかける。また、極低温化にて磁場計測を行い、有用質量の変化の有無等を調べる。
超流動発現を念頭に行ってる電子・正孔2層系のクーロンドラッグについては、現在行っているSOI膜厚20nm程度からさらに薄い領域に関する測定を行い、ドラック電圧の増大可能性を評価する。また、ドレイン電圧を増大したときに発現する非線形性を詳しく解析し、電子層、正孔層間の熱伝導に関する情報が抽出可能であるかどうかを評価する。さらに、トランジェントな電子・正孔2層系については、より低温での計測を可能とするための基板濃度変調を行った水準について試作を行い、実際に極低温測定が可能かどうかを評価する。
上記の計画において、分担者・堀は、トランジェントな電子・正孔2層系に関して、極低温下での計測を可能とするデバイスの試作、および同デバイスの計測を担務す。分担者・影島は、2次元周期構造を有するMOSトランジスタにおける有効質量の理論的解析、および、電子・正孔2層系の解析に必要となる計算手法に関する調査を行う。研究代表者・小野は、研究を統括するとともに、MOSトランジスタの測定全般を行う。

次年度使用額が生じた理由

当該研究費で雇用を予定していた特任助教が次年度より転籍することが決まり、このため、当該特任助教が行う予定であった計画に必要とされる装置購入を保留したため。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Magnetometry of neurons using a superconducting qubit2023

    • 著者名/発表者名
      Hiraku Toida, Koji Sakai, Tetsuhiko F. Teshima, Masahiro Hori, Kosuke Kakuyanagi, Imran Mahboob, Yukinori Ono & Shiro Saito
    • 雑誌名

      Communications Physics

      巻: 6 ページ: 19_1-6

    • DOI

      10.1038/s42005-023-01133-z

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Room-temperature single-electron tunneling in highly-doped silicon-on-insulator nanoscale field-effect transistors2022

    • 著者名/発表者名
      T. Teja Jupalli, A. Debnath, G. Prabhudesai, K. Yamaguchi, P. Jeevan Kumar, Y. Ono, D. Moraru
    • 雑誌名

      Applied Physics Express

      巻: 15 ページ: 065003_1-4

    • DOI

      10.35848/1882-0786/ac68cf

    • 査読あり
  • [学会発表] 超伝導磁束量子ビットによる神経細胞の磁化測定2023

    • 著者名/発表者名
      樋田啓, 酒井洸児, 手島哲彦, 堀匡寛, 角柳孝輔, Imran Mahboob, 小野行徳, 齊藤志郎
    • 学会等名
      2023年 日本物理学会 春季大会
  • [学会発表] MOS界面の単一欠陥チャージポンピングによって可能となった両性準位における電子捕獲素過程の直接観測 (7) - τDに関する考察 -2023

    • 著者名/発表者名
      土屋敏章, 堀匡寛, 小野行徳
    • 学会等名
      2023年 第70回 応用物理学会 春季学術講演会
  • [学会発表] MOS界面の単一欠陥チャージポンピンによって可能となった両性準位における電子捕獲素過程の直接観測 (6) -欠陥構造緩和(Ⅱ)-2023

    • 著者名/発表者名
      土屋敏章, 堀匡寛, 小野行徳
    • 学会等名
      2023年 第70回 応用物理学会 春季学術講演会
  • [学会発表] シリコンMOS構造における電子流体の観測と低消費電力デバイス応用2023

    • 著者名/発表者名
      小野行徳
    • 学会等名
      共同プロジェクト研究(R02/S01) 先端的コヒーレント波技術の基盤構築とその応用 東北大学-静岡大学合同冬季研究会
  • [学会発表] シリコンMOS構造における電子流体の観測と低消費電力デバイス応用2023

    • 著者名/発表者名
      小野行徳
    • 学会等名
      第1回研究会「エネルギーの高効率利用を考える革新的システムナノ技術」
    • 招待講演
  • [学会発表] Electrical formation of electron-hole coexisting system at Si MOS interfaces2022

    • 著者名/発表者名
      Jinya Kume, Yukinori Ono, and Masahiro Hori
    • 学会等名
      第24回高柳健次郎記念シンポジウム
    • 国際学会
  • [学会発表] Control of Electronic Charges and Currents in Nano-scaled Silicon2022

    • 著者名/発表者名
      Y. Ono
    • 学会等名
      ICTA 2022
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] MOS界面の単一欠陥チャージポンピングによって可能となった両性準位における電子捕獲素過程の直接観測 (5) -タイプ4と5の識別-2022

    • 著者名/発表者名
      土屋敏章, 堀匡寛, 小野行徳
    • 学会等名
      2022年 第83回 応用物理学会 秋季学術講演会
  • [学会発表] MOS界面の単一欠陥チャージポンピングによって可能となった両性準位における電子捕獲素過程の直接観測 (4) -欠陥構造緩和-2022

    • 著者名/発表者名
      土屋敏章, 堀匡寛, 小野行徳
    • 学会等名
      2022年 第83回 応用物理学会 秋季学術講演会
  • [備考] 静岡大学 小野・堀研究室ホームページ

    • URL

      https://wwp.shizuoka.ac.jp/nano/

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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