研究課題/領域番号 |
22K18296
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡部 聡 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10253816)
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研究分担者 |
山村 寛 中央大学, 理工学部, 教授 (40515334)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | バイオ燃料電池 / 膜分離バイオリアクター / 電導性分離膜 / 下水処理 |
研究実績の概要 |
本研究では、酸素供給(曝気)を必要とせず固体電極を最終電子受容体として用いるバイオ燃料電池(MFC)を膜分離バイオリアクター(MBR)に導入することにより、下水処理と電気エネルギーの直接回収を行い、得られた電力を利用し電導性膜分離の電位を人為的に制御し、膜ファウリングを抑制しながら膜分離による高度下水処理を同時に達成する、新規MFC搭載型エネルギー自給式ハイブリッド電気化学的膜分離バイオリアクター (He-MBR)を開発する。 本年度は、既存のMBR槽内にカセット式空気カソードMFCを複数ユニット挿入したHe-MBRを構築した。アノード電極は、高密度で充填可能なグラファイトカーボンブラシを使用した。カソード電極はステンレス膜(膜口径2 ㎜)を基盤とし、微粉末活性炭(PAC)を添加したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を塗布することで作製した。鍵となる導電性分離膜は、ステンレススチールメッシュ (孔径: 0.11 mm, 厚さ:0.06 mm) を基盤とし、ポリエチレングリコール(PEG-600)とDimethyl Sulfoxide (DMSO)を添加したPVDF混合高分子溶液を塗布することにより作製することに成功した。作成した電導性分離膜の物理電気化学的特性(孔径、表面凹凸、など)を評価した。さらに、デッドエンド式膜ろ過実験を行い膜の透過性、ファウりング特性、COD除去率、微生物(大腸菌)の除去率を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の鍵となる導電性分離膜の作成に目途が立った。ステンレススチールメッシュ (孔径: 0.11 mm, 厚さ:0.06 mm) を基盤とし、ポリエチレングリコール(PEG-600)とDimethyl Sulfoxide (DMSO)を添加したPVDF混合高分子溶液を塗布することにより作製できることが明らかとなった。作成した電導性分離膜の物理電気化学的特性の評価実験手法およびデッドエンド式膜ろ過実験方法をおおむね確立できた。さらに、MFCで下水から得られる電気エネルギーを電導性分離膜や空気カソードの電位制御の電源として利用できるか?の問いに対し、自励発振型LVB+AC/DC電圧増幅器により、低MFC電圧を任意の出力電圧まで昇圧できる可能性が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、酸素供給と膜ファウリング防止のための膜面洗浄を目的とした曝気を廃止した場合、膜ファウリングの進行を抑制できるか?について検討する。電導性分離膜の電位を正の値(>+0.82 V vs. SHE)に制御した場合、酸素還元反応により過酸化水素(H2O2)および-OHラジカルが発生し、電位を負の値(<-0.43 V)に制御した場合、H+還元反応により膜表面で発生するH2ガスバブル、静電気的反発力、pH上昇、等により膜ファウリングは抑制可能と考える。これを検証するために、電導性分離膜をカソード電極とした二層式MFCを構築し、ポテンシオスタットを用いて電導性分離膜の電位を制御し連続定流量運転を行い、吸引圧力の変化をモニタリングする。膜電位を正及び負に変化させて発生するH2O2およびH2ガス量や膜表面に付着・蓄積するバイオマス量(ケーキ層)を定量し、膜ファウリングに及ぼす影響を定量的に評価する。さらに、電極呼吸が電気生産細菌の代謝経路の変化を促し、膜ファウリング原因物質(SMPやバイオポリマー)の生産量、種類、特性に及ぼす影響についても実験的に検討する。 さらに、動作電圧が低く(0.2 V以下)、最大出力電圧を任意に設定可能な自励振動トランジスタ+AC/DC電圧増幅回路+蓄電ユニットから構成される低MFC電圧用昇圧・増幅・蓄電電気回路(LVBM)を設計・作製しその性能を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症拡大防止の観点から、関連学会がオンライン等で開催されたり、情報収集を自粛したことによる旅費の支出が予定よりも少なかった。また、分担者の研究機関で実施する予定であった電導性分離膜作成およびその物理電気化学特性評価の実験が遅れたことにより、当初予定していた材料費や実験経費が少なくなった。 次年度は、電導性分離膜の作製方法がおおむね確立されたことより、作成方法の最適化を迅速に試みるため、当初予定していた研究計画以上の実験を実施する。また、研究を加速させるため、情報収集や学会発表等を積極的に行う予定である。
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