研究課題
本研究の目的は、超低消費電力で動作しCO2削減の切り札となる革新的強誘電体デバイスを実現するために、これまで不可能とされてきた室温合成可能な単純化合物強誘電体群を開拓することである。研究代表者は、陽イオンが1種類で結晶構造がシンプルな単純化合物(AXやAX2)であれば、結晶化のエネルギー障壁が低く合成時の劇的な低温化が可能ではないかとの着想を得た。本研究では、蛍石構造のHfO2基強誘電体とウルツ鉱構造のAlN基強誘電体を中心として結晶構造由来の強誘電性では不可能とされてきた、従来の常識を打破する“室温合成が可能な新規単純化合物強誘電体群”を開拓する。本年度は、蛍石構造を有するHfO2基薄膜の内、強誘電性の得られる組成の広いHfO2-CeO2とウルツ鉱構造を有する(Al,Sc)N膜について、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて非加熱での種々の組成の薄膜合成を、種々の基板上に試みた。その結果、以下を得た。1.非加熱製膜した膜は基板の種類や下部電極の配向によらず(100)方向に配向しやすく、(100)が自己配向方向であることが明らかになった。この結果はHfO2-Y2O3膜でも観察されたことから、HfO2系強誘電体膜全体の傾向であることが明らかになった。2.非晶質の透明電極ITO上に作製した膜では、膜厚が上昇するほど特性が向上した。TEM観察からその原因は、非晶質のITOの直上部分が十分に結晶化できていないことが明らかになった。この結果は、下部電極の結晶性改善によって、より特性が向上する可能性があることを示している。
2: おおむね順調に進展している
特性を向上させるために、下部電極と膜の界面の制御が重要であることが確認でき、今後の研究方針が明らかになった。
下部電極の結晶性を向上させ、膜の結晶性および特性との関係を解明する。最終的に、より優れた特性を有する膜の作製をめざす。
理由は以下である。1.当初購入予定だった消耗品が、他の予算でカバーできたこと2.参加する予定であった学会が、学内行事で参加できなかったこと次年度は、昨年参加できなかった学会も参加し、積極的に成果を発信する予定である。
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physica status solidi (a)
巻: 220 ページ: 2300100-1-6
10.1002/pssa.202300100
APL Materials
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https://f-lab.iem.titech.ac.jp/