研究課題/領域番号 |
22K18312
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平井 隆之 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (80208800)
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研究分担者 |
白石 康浩 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (70343259)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | アンモニア / 光触媒 / ニオブ酸スズ / 人工光合成 / エネルギー |
研究実績の概要 |
ニオブ酸スズ半導体を基盤とする光触媒により、太陽光を利用して、NH3を原料とする新しい物質変換技術を開発する。(1)NH3水溶液から硝酸を製造しながらH2ガスを生成させる反応、ならびに (2)NH3水溶液とCO2ガスから常温・常圧下で尿素を合成する反応、の二つの太陽光エネルギー蓄積型反応に挑戦する。特殊酸化サイト(Sn-N-Nb)の解析とメカニズムの解明に基づく基礎固めを行うほか、酸化サイト近傍への還元活性点の導入などの機能集積を通して活性の飛躍的な向上を目指す。これらの研究を通して、高難度反応を太陽光エネルギーにより常温で進行させる革新技術を確立し、NH3の関わる触媒化学を開拓する。 2022年度は、(1)について検討した。Sn2Nb2O7触媒に水素還元法でPtを担持した触媒が両論反応(NH3 + 3H2O → 4H2 + HNO3)を定常的に進行させることを見出した。定常反応が進行する前には、H2とN2が生成すること、また、XPS測定により触媒表面の酸素原子が脱離することを明らかにした。したがって、初期反応により骨格の酸素原子が脱離した「表面酸素欠陥」が形成されることが分かった。また、定常反応中の触媒のXPS測定を行うと、Sn-N-Nbに由来するシグナルが確認された。また、定常反応中の触媒をセル内に詰め、水の存在下で光照射を行いながら赤外スペクトルを測定したところ、HNO3の生成が見られた。したがって、初期反応により形成された酸素欠陥部位にNH3が挿入され、これがHNO3を生成させるサイトとして機能することを突き止めた。DFTにもとづく計算化学も並行して行うことにより、上述のメカニズムの妥当性を確認でき始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Pt/Sn2Nb2O7触媒が両論反応(NH3 + 3H2O → 4H2 + HNO3)を定常的に進行させることを見出した。活性点は、初期反応により生成した「表面酸素欠陥」であること、欠陥にNH3が挿入された種がHNO3を生成するサイトとなることを明らかにできている。計算化学も並行しながら順調にメカニズム解析を進めることができており、それゆえ区分(2)に該当すると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、Pt/Sn2Nb2O7触媒によるアンモニアと水からの硝酸およびH2生成反応(NH3 + 3H2O → 4H2 + HNO3)を投稿論文としてまとめる。さらに、本触媒の改良により、NH3およびCO2を原料とする尿素合成を進めるための光触媒へのアップグレードを図る。
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