研究課題
第二年度は初年度に開始した振動対策を継続した。前年度中に製作を依頼したアンチバイブレーションブロックが完成し、無冷媒クライオスタットとコンプレッサー間に設置することで、クライオスタット冷却時においても顕微分光に十分耐えうる顕微観察像を得ることが可能になった。クライオスタットの振動対策と並行して、低温磁場下でラマン分光測定を行うための光学系の整備を進めた。昨年度は633 nmの励起光を用いて室温で偏向分解顕微ラマン測定を可能にする装置を構築したが、これは主に低温測定前の試料品質評価を目的としている。これに対し本年度では、532 nmのレーザーや分光器本体を新たに導入しクライオスタットと一体となった光学定盤上に新たに光学系を整備した。こちらの光学系は低温や磁場下での顕微分光測定を念頭にしたものである。これまでに、クライオスタット内に配置された二次元物質のマイクロスケール試料における顕微ラマン測定が可能であることを確認している。また、昨年度構築した室温での測定系同様、偏向分解測定が可能である。初年度と第二年度に構築した光学系はそれぞれ異なる波長のレーザー光源を用いている。一般的にラマン測定においては低波長の方が信号が強くでるものの、物質との組み合わせにより特定の波長で信号が増幅される場合もある。本研究で構築した二つの光学系を光ファイバーで結ぶことにより、将来的には室温において532 nmを用いた測定や、低温磁場下における633 nmを用いた測定も可能になる。
2: おおむね順調に進展している
初年度で発覚したクライオスタットの振動対策は当初想定しなかった作業であったものの、第二年度までに測定系の構築を進め実際に顕微ラマン測定を行えるところまで到達することができたため、本年度の進捗はおおむね計画通りであると考えている。
最終年度では、二次元物質MoS2を用いた電気二重層トランジスタの作製を始める。まず電界誘起超伝導の再現実験を進め、その後、偏向分解顕微ラマン測定を用いて電界誘起超伝導状態における超伝導ギャップの特性を探る。
光学系の構築時に状況を見ながら導入部品を決定したため、当初想定していたものと異なる物品を購入した。そのために差額が発生した。差額は、次年度に光学系の性能を向上させるための追加部品の購入に充てる。
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Nano Letters
巻: 23 ページ: 9280~9286
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