研究課題/領域番号 |
22K18320
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三輪 真嗣 東京大学, 物性研究所, 准教授 (20609698)
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研究分担者 |
井上 圭一 東京大学, 物性研究所, 准教授 (90467001)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | スピントロニクス |
研究実績の概要 |
初年度である2022年度は実験環境の構築に注力した。デバイス作製準備として溶液測定における課題を解決した。溶液の封止技術には市販のUV硬化樹脂を複数試して最適なものを選定した。次に溶液による腐食に強い強磁性金属を選定した。よく用いられる強磁性金属であるNi・Coに対して、Ni・Ni-Auコーティング・Co-Auコーティングの3種類を試した結果、表面Auが5-10nm程度で腐食を止められることがわかった。しかし、Auによるコーティングは翌日までは保たれないこともわかった。そこでコーティング層を使わず強磁性金属のみで腐食に耐えられる材料の開発を行った。結果として、CoPt多層膜を用いることでAu等の表面コーティング層がなくても腐食に耐えて磁気モーメントを長時間維持できることがわかった。そこで、CoPt多層膜及びCoPt表面にNiやAuをコーティングした材料を電極材料の基本形とした。その一方でCoPt電極にはこれまで微細加工に用いていたフォトレジストAZ5214Eが使えないことが判明したため、AZ6214及びLOR-3Aを用いた微細加工プロセスを新たに確立した。 溶液中で測定するためには、サンプル周りにスペースを確保した測定用プローバーが必要である。このため特注の電磁石を用意して0.8テスラの垂直磁場を安定して印加できる装置を作製した。また、ロドプシンの光反応を調べられるようにレーザーを照射できるようにプローバーを改造した。 最後にタンパク質の薄膜を安定して強磁性電極上に作製するプロセスの確立を行った。最初は先行研究で実績のあるバクテリオロドプシンを水に分散させて、ドロップキャスト法で作製することを試みた。電極表面をUVオゾンクリーニングで丁寧に洗浄し、分散溶液の濃度とドロップキャスト量を精密に制御することでバクテリオロドプシンの単分子膜が作製できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に溶液中でスピントロニクスデバイスを測定するための準備ができている。研究はおおむね順調に進展しており、次年度からは研究課題の目的であるロドプシンの光反応の電気的検出に注力する。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り初年度に作製手法を最適化したタンパク質修飾スピントロニクスデバイスを用いて、タンパク質の光反応の電気的検出を試みる。現在はロドプシンを物理吸着させているが、状況によっては自己組織化単分子膜を用いた化学吸着法も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の残量に余裕があったため、次年度使用額が生じた。次年度に消耗品として使用予定である。
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