研究課題/領域番号 |
22K18324
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
鍋川 康夫 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 専任研究員 (90344051)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2027-03-31
|
キーワード | 非線形光学 / サブサイクル光パルス / 赤外光 / 光学パラメトリック増幅 |
研究実績の概要 |
本年度はOPAシステムの改良のためのチタンサファイア増幅器の仕様の検討を繰り返すこととなった。これは科研費申請時と比較して大幅な円安と物価上昇が生じたため、当初予定していた備品の購入が困難になったことによる。当初は現有システムの繰り返し周波数(200Hz)を維持したままOPA出力パルスエネルギーを1mJ程度まで引き上げる仕様を検討していたが、この仕様ではチタンサファイアレーザーを励起する為のグリーンレーザーがあまりにも高額になってしまうことが分かった。そこで繰り返しを半分の100Hzとすることで、パルスエネルギー180mJ程度のグリーンレーザーを用意することとした。チタンサファイアレーザーのパルスエネルギーがその11%程度(~20mJ)得られる見通しがあるので、OPAの出力が、チタンサファイアレーザーのパルスエネルギーの5%程度得られれば、当初の目標値1mJが得られる。なお、励起効率はこれまでのレーザー開発で得られた数値を用いている。 これと並行して、現行レーザーシステムから得られるサブサイクル光を光渦に変換する設計も行なった。光渦は径偏光・方位角偏光と同様ビーム中心に位相特異点を持ち、起動角運動量をもつレーザー光として多岐に渡る応用が期待されている。1オクターブ以上の帯域幅を持つサブサイクル光を光渦に変換する際には径偏光・方位角偏光への変換と同様、どの様にして広帯域性と超短パルス性を同時に実現するかが大きな課題となっており、まずこれを実現することで径偏光・方位角偏光への変換への道筋を見出す意図がある。なお、研究の大部分は連携研究者のYu-Chieh Lin博士が担当している。この結果Sagnac干渉計をサブサイクルパルス光のモード変換光学系として用いることができることが分かり、これを採用することとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はOPAシステムの励起に用いるチタンサファイアレーザーシステムの仕様を検討した。急激な円高と物価上昇のため当初計画していたレーザーの購入が困難になったため、繰返し周波数を低めに設定する等の対応を行い、パルスエネルギーについては当初の予定通りとできる見込みがたった。 また、ベクトルビームと関連が深い光学渦ビームについて、ガウスモードからLGモード(光渦)への変換手法についてのの検討を行い、1オクターブ以上のスペクトル帯域幅に於いてLGモードへの変換を行える見通しが立った。これは当初の計画では想定していなかった進展であり、上記仕様の決定と合わせて、概ね順調な研究進捗状況と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度はチタンサファイアレーザーの励起に用いるグリーンレーザーを調達する。これはグリーンレーザー空間プロファイルを実測しないと、チタンサファイアレーザーシステムの具体的な設計が行えないためである。空間プロファイルを実測した後に最も均一なビームプロファイルをイメージリレーしてチタンサファイア励起に用いる光学系を設計する。チタンサファイアはマルチパス増幅器中で用いるが、繰り返し100Hz程度の励起の場合、熱レンズによる伝搬の効果を補正する光学系に工夫が必要なことが分かっており(数mmと言う比較的大きなビーム径をチタンサファイア上で維持しながら1m程度の焦点距離の熱レンズ補正が必要なため)、このための新たな光学系も設計する。 チタンサファイアレーザーに必要な部品を調達している間に既存のサブサイクルOPAレーザーシステムで光学渦ビームを発生させ、空間位相とCEPの関係を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
科研費申請時と比較して大幅な円安と物価上昇が生じたため、当初予定していた備品の購入が困難になり、これに付随した消耗品(ミラーやホルダー等)の仕様決定・選定が遅れた。差額は主にこれら選定の遅れた消耗品を購入出来なかったことにことによって生じたものである。2023年度には、仕様変更した備品とともに、これらの消耗品を購入する予定である。
|
備考 |
高次高調波応用研究に関するプレスリリース(EurekAlert)。
|