研究課題/領域番号 |
22K18332
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
芝原 文利 岐阜大学, 工学部, 准教授 (60362175)
|
研究分担者 |
武藤 雄一郎 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 上級研究員 (50453676)
笹森 貴裕 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70362390)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
キーワード | 含窒素複素環シリレン / シリレン錯体 / 触媒反応 |
研究実績の概要 |
含窒素複素環シリレン(NHSi)は、不安定ながらも含窒素複素環カルベン(NHC)と同様の安定化手法により、遊離状態の化合物の単離例のある安定化化学種である。一方、NHCと比較し、配位元素 がケイ素になり、混成軌道の取りにくさからs性が向上し、特に基底一重項をとりやすいシリレンの性質もともない、非共有電子対による高いドナー性とともに、空のp軌道による高いアクセプター性をあわせ持つため、対応する金属錯体では、軌道が持つエネルギー的には 通常のNHC配位子では起きないとされる金属からの有意な逆供与が発現して金属のπ酸性を向上させることが期待できる。これに加えて、特にドナー性軌道の広がりは、同周期のリンに類似していることが予想され、配位子としてはリン配位子により近い性質すなわち、NHC より高い遷移金属元素との親和性を示し、より強固な錯形成が期待できる。 初年度に当たる昨年度は特に縮環構造をもつNHSiおよびその錯体合成をめざし、その前駆体になる対応するジクロロシラン並びにヒドロクロロシランの合成を検討した。ジクロロシランの生成はまだ確認できていないが、ヒドロクロロシランに関しては合成を達成し、X線結晶構造解析で構造確認までできた。この際、形式的には2-ピリジルメチルアミンとポリクロロシランとの反応によって生じるピリジルメチルアミノシランに対し、強塩基を作用させて縮環させているが、懸念事項であった通常では反応しにくいと考えられるケイ素のβ位上の水素を脱プロトン化することができ、すなわち一般的なβ効果より環構造の芳香族化の寄与がかつことを明らかにし、対応する縮環構造を導けることが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていたシリレン前駆体の合成の目処が立ち、前駆体のX線構造解析も達成できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
継続的にジクロロシラン前駆体の合成を検討するが、本研究課題の主目的であるシリレン錯体の触媒反応への応用に関しては、ヒドロクロロシラン前駆体への低原子価遷移金属の酸化的付加、引き続く銀塩を用いる脱クロロ化によりシリレン錯体が合成できる目処が立っており、実際これらを順に検討していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表のチームで細かい端数についての残金が生じたこと、分担チームにおいて実施した昨年の研究がおおよそ現有機器・試薬でまかなえたこと、ならびに別経費との合算で購入予定であった別の機器の納入が翌年度送りになったため、次年度使用額が増えた。これらは順次予定通り支出していく。
|