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2022 年度 実施状況報告書

減数分裂の性差を引き起こす分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K18365
研究機関名古屋大学

研究代表者

田中 実  名古屋大学, 理学研究科, 教授 (80202175)

研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2025-03-31
キーワード減数分裂 / 性差 / クロマチン動態 / メダカ / rec8 / terb1
研究実績の概要

申請者はメダカ生殖細胞の性決定研究においてメス特有の減数分裂機構が存在することを発見し(Science 2015, PNAS 2020)、染色体高次構造を作り出すコヒーシン(REC8)が関わることを見出した。メダカには2つのrec8 遺伝子(rec8a, rec8b)が存在し、rec8a変異体はメスでのみ減数分裂が停止することから、コヒーシンの量的あるいは質的な性差が染色体高次構造を変え、組換えランドスケープの性差をもたらすと考えた。
減数分裂の性差は、染色体あたりの組換えの数や位置(組換えランドスケープ)の差として認められ、その組換えランドスケープは以下に述べる減数分裂染色体の「高次構造」と「核内動態」を基盤として形成される。本研究ではこの高次構造と核内動態に着目して解析を行う。
本研究では、高輝度高解像度のライブイメージング手法と条件的タンパク質分解法を確立し、独自の変異体を用いた核内動態解析と超解像度顕微鏡による染色体構造解析を行い、組換えランドスケープの性差をもたらす分子機構を明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

相同染色体軸を構成するタンパク質 SCYP3 と EGFP とを融合させた遺伝子をメダカの SCYP3 遺伝子の制御領域に組み込んだコンストラクトを作製し、メダカに導入してトランスジェニックメダカSYCP3_EGFP 系統を確立した。そこでSYCP3_EGFP 系統を用いて、減数分裂期の染色体動態の可視化を試みた。
この系統とスピニングディスク共焦点レーザー顕微鏡を用いて最終的に数分にわたる減数分裂前期相同染色体動態のイメージングに成功した。減数分裂前期は相同染色体の形成過程でレプトテンやザイゴテン、パキテンなどに分けられるが、以前のマウスの報告とは異なる時期、パキテン期にメダカの相同染色体は大きな回転運動を行うことが示された。
また AID を用いた特定タンパク質の誘導的分解がメダカの生殖細胞でも適応できるかの検討を行なった。AID をターゲットとした分解を媒介するTIR と、AID でタグ付した EGFP のRNA をメダカ受精卵にマイクロインジェクションし、分解誘導物質オーキシンアナログの存在、非存在下で生殖細胞でのEGFP蛍光強度を調べた。オーキシンアナログを加えた場合インジェクションRNAから翻訳されたEGFP蛍光は加えない時よりも明らかに減弱していた。
また組換えランドスケープを調べるために、組換えマーカーMLH1に対する抗体、雌雄の生殖細胞で発現の異なるRec8a/bに対する抗体の作製を行なった。Rec8a/bのそれぞれに対する特異抗体を得ることには成功した。

今後の研究の推進方策

特定タンパク質をAIDにより誘導分解するシステムはメダカ でも可能との予備結果が得られたが、これはRNAから翻訳されたタンパク質での結果である。トランスジェニックメダカも用いて、de novo でタンパク質が発現した時の詳細なデータの取得を引き続き行う。
減数分裂前期の相同染色体動態の解析に成功し、他の動物では報告のない知見も得ることができた。今後はこの培養時間とイメージ取得時間を長くすることを試みる。パキテン以前の染色体動体がどうであるのかの解析も推し進める。そしてこの動きに性差があった場合、terb1や rec8 などのその他の減数分裂因子変異体によっても動態や組換えランドスケープの性差が影響を受けるのかを解析する。また組換えランドスケープを解析するための抗体作製をおこなう。
また動態とは別にrec8a/bなどの減数分裂因子変異体の相同染色体軸長や組換え位置や個数の性差を調べ、これらのどの要素が減数分裂生さと繋がるのかを明らかにしていく。

次年度使用額が生じた理由

複数回にわたる組換えランドスケープ解析では重要な要素である組換え位置を特定するマーカーを得ることができなかった。MLH1変異体も作製し、そのホモ接合体で表現型の解析を予備的に行なったが、マウスや他の動物での変異体表現型とは異なり、メダカのMLH1変異体で減数分裂生殖細胞に明らかな障害を認めることができなかった。このことはメダカMLH1は他の脊椎動物とは違う機能を有するのか、ほかのタンパク質がMLH1を補完して働いていることを示唆している。そこでMLH1以外でマーカーとなり得るタンパク質をターゲットとして抗体を作成することにした。このためこの抗体作製の経費と、詳細な組換えランドスケープ解析のための経費、さらにゲノムや転写物解析の経費を次年度に持ち越すこととした。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] KIST(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      KIST
  • [国際共同研究] Academia Sinica, Taiwan(その他の国・地域)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      Academia Sinica, Taiwan
  • [国際共同研究] Univeristy of Wurzburg(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Univeristy of Wurzburg
  • [雑誌論文] Generation of self-fertilizing hermaphrodite fish from gonochoristic fish, medaka (Oryzias latipes).2022

    • 著者名/発表者名
      Nishimura, T. and Tanaka, M
    • 雑誌名

      Sex. Dev.

      巻: 16 ページ: 283-288

    • DOI

      10.1159/000526073

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Zygotic nanos3 mutant medaka (Oryzias latipes) displays gradual loss of germ cells and precocious spermatogenesis during gonadal development.2022

    • 著者名/発表者名
      Nishimura, T. and Tanaka, M.
    • 雑誌名

      Zool. Sci.

      巻: 39 ページ: 286-292

    • DOI

      10.2108/zs210123

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Functional Modules in Gametogenesis.2022

    • 著者名/発表者名
      Kikuchi, M. and Tanaka, M.
    • 雑誌名

      Front. Cell Dev. Biol.

      巻: 10 ページ: 914570

    • DOI

      10.3389/fcell.2022.914570

    • 査読あり
  • [学会発表] 卵になるか、精子になるか 生殖細胞性決定研究から見えてきた世界2023

    • 著者名/発表者名
      田中実
    • 学会等名
      熊本大学 発生医学研究所 セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] MOLECULAR MODULES THAT CREATE EGGS AFTER SEX DETERMINATION OF GERM CELLS2022

    • 著者名/発表者名
      Tanaka, M
    • 学会等名
      30th CECE & 9th ISFE
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] メダカ生殖細胞におけるオーキシン依存的ノックダウン法(AID法)の有用性2022

    • 著者名/発表者名
      Nadia Eliora、菊地 真理子、西村 浩平、田中 実
    • 学会等名
      第45回 日本分子生物学会年会
  • [学会発表] メダカを用いた減数分裂期細胞のライブイメージング系の確立と減数分裂の性差解析2022

    • 著者名/発表者名
      亀井 築, 菊地 真理子, 酒井則良, 西村 俊哉, 亀山 詩夕, 田中 実
    • 学会等名
      第45回 日本分子生物学会年会
  • [学会発表] terb1変異体における雌雄で異なる表現型の解析2022

    • 著者名/発表者名
      亀山詩夕, 菊地真理子, 田中実
    • 学会等名
      第55回 日本発生生物学会
  • [学会発表] 配偶子形成を構成する機能的モジュール2022

    • 著者名/発表者名
      菊地真理子、田中実
    • 学会等名
      第55回 日本発生生物学会
  • [図書] Spectrum of Sex2022

    • 著者名/発表者名
      Tanaka M. and Tachibana, M.
    • 総ページ数
      233
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      978-981-19-5358-3
  • [備考] 名古屋大学大学院理学研究科 生殖生物学グループ

    • URL

      http://www.medaka.bio.nagoya-u.ac.jp/

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公開日: 2023-12-25  

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