研究課題/領域番号 |
22K18366
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
八木田 和弘 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90324920)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 概日リズム障害 / シフトワーク / マウスコホートモデル / Chronic jet-lag / NAFLD / 腸内細菌叢 / 非遺伝的要因 / 個体差 |
研究実績の概要 |
本研究は、「マウスコホート系」の方法論によって、概日リズムの不適合がもたらす病態(概日リズム障害)の、未病から病態成立に至るまでのプロセスを再構成することを目指す。さらに、これらの成果をもとに、ヒトの概日リズム障害の早期検出を、病態メカニズムと紐付いた生理指標によって実現することを目的とした研究を実施している。 本年度の成果は、概日リズム障害の合併症のうち、非アルコール性肝疾患(NAFLD)に焦点を当て、概日リズム不適合とNAFLD病態成立の関連性についてマウスコホートモデル系を用いて解析した。概日リズム不適合(Chronic Jet-lag : CJL)条件に47週間暴露し、その過程で経時的に体重・活動リズム・摂食量を計測。さらに47週間後に肝臓の組織学的解析、RNA-seq、血清マーカー解析、腸内細菌叢解析、を個体ごとに実施し、個体別の多層的生体解析データセットを取得。対照群と比較し、CJL群では有意な脂肪肝発症率の上昇を認めたが、CJL群内での病態に非常に大きな個体差が見られることが明らかとなった。その個体差の原因について解析し、可能性のある病態メカニズムについてさらなる解析を進めている。 マウスコホート系を活用した発生発達期のマウス母体リズムの胎児への影響解析系の確立については、すでに母子同調を担う胎盤機能に重要な遺伝子の欠損マウスの作成に着手しており、母子同調のメカニズム解明に向けて着実に研究が進展している。 また、非侵襲なヒト概日リズム計測データの解析によるヒト概日リズム制御系の包括的評価については、すでに、パイロット研究として少人数の健常ボランティアを対象として自律神経活動リズム・体温リズム・活動リズム等の計測と解析により、多層的生理機能データによる概日リズム評価に目処がついた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マウスコホートモデル、という我々が独自に確立した慢性疾患の病態発症再現モデルを用いた概日リズム障害の再現系に挑戦する研究であり、約1年近くにわたる観察期間ののちにさまざまなデータを取得するというリスクの高い研究計画であった。しかし、事前の十分な条件検討やパイロット研究に基づく計画であったことが功を奏し、予定した以上に研究成果が上がっている。当初の目的である、明暗シフトというライトのON/OFFの変化のみでNAFLDという病態が生じるのか、またヒトの概日リズム障害でもみられる大きな個体差の原因がどこにあるのか、というヒトの病態解明に欠かすことができない知見とえることに目処がついている。そのため、当初の計画以上に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
概日リズムの不適合がもたらす病態(概日リズム障害)の、未病から病態成立に至るまでのプロセスを再構成するためのヒトの概日リズム障害の病態再現に目処がついたため、これを用いて病態成立プロセスの解明をさらに進める。これに加えて、ヒトの多因子慢性疾患に共通する「個体差」のメカニズムの解明を目指す。具体的には、遺伝的要因による個体差を最小限に抑えたマウスを用いた病態再現系であることを利用し、病態発症や重症度に寄与する非遺伝的要因を同定する。これらを通し、環境要因によって生じるヒト慢性疾患の初めての再現モデルとして、疾患の予防法開発の基盤を構築するための方法論を確立する。 マウスコホート系を活用した発生発達期のマウス母体リズムの胎児への影響解析系の確立については、母子同調のメカニズムについて詳細な検討を始めている。すでに母子同調を担う胎盤機能に重要な遺伝子の欠損マウスの作成に着手しており、これを用いて母子同調の主要な同調因子を同定し、明暗シフトによる母子同調の撹乱モデルを構築する。 また、非侵襲なヒト概日リズム計測データの解析によるヒト概日リズム制御系の包括的評価については、すでに、医学倫理委員会の承認を得ており、自律神経活動リズムと睡眠リズム、さらに食との関連が深い血糖値の連続同時記録に成功するなど基礎データを取得する準備が整っており、パイロット研究として少人数の健常ボランティアを対象とした計測と解析を開始している。マウスコホート研究で明らかになった病態成立メカニズムと前段階の未病状態とヒト概日リズム不全を比較検討し関連性を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、母子同調メカニズムの解明を目的とした遺伝子改変マウスの作成を外部委託しようと計画していたが、共同研究者による無償でのマウス作出が可能となり、今年度の支出が抑えられた。この研究経費については、次年度以降に当初の計画以上に展開する研究のために使用する。
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