研究課題/領域番号 |
22K18383
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
片山 量平 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 基礎研究部, 部長 (60435542)
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研究分担者 |
荒木 望嗣 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (10452492)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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キーワード | キナーゼ / 分子動力学シミュレーション / 遺伝子変異 / 分子標的薬 |
研究実績の概要 |
本研究では、私たち細胞を構成するタンパク質の構造について、超高精度な動的タンパク質構造解析を通じ、普段は隠されているような未知の活性制御領域の同定やその機能、そして新規機能制御分子の発見を目指す。そのために、スパコンを用いた超高精度動的構造シミュレーションを行うことで、タンパク質が生体環境下でどのように働いているかを可視化し、タンパク質同士やタンパク質と薬剤などがどのような親和性でどのように結合しているか、さらには新たな活性制御領域や薬剤結合標的となりうる部位の同定、in silico screeningにも応用可能な動的構造解析システムの構築などを行っている。初年度は、EGFRの多剤耐性変異(活性化変異+3個の重複変異)と新たにそれに対する阻害薬候補を見出した。この変異体を導入したがん細胞やモデル細胞(BaF3細胞)を用いて薬剤感受性を精緻に評価するとともに、精製EGFRキナーゼを用いてin vitro kinase assayを行った。さらに、独立してこの多重変異体と、耐性克服薬候補の親和性や結合様式の推定を分子動力学シミュレーションによって計算した。さらに、高精度のシミュレーションにするために、長時間の分子動力学シミュレーション計算を行った。 また、実験的検討の段階ではあるが、ALKの様々な多剤耐性変異が血中ctDNAから検出された症例をもとに、存在しうる耐性変異の組み合わせを考慮して、どのような治療をするとどのような変異体が出現または残存するかを解析した。今後構造シミュレーションから計算される親和性データによっても推定が可能かどうかにも挑戦していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたとおりの研究推進ができているため。具体的には、EGFR活性化変異陽性肺がんにおける新たな多剤耐性変異を見出し、その変異体について、細胞生物学的検討と精製キナーゼを用いた生化学的解析を行うとともに、研究分担者の荒木によってスパコン富岳を駆使した分子動力学シミュレーションと親和性計算が順調に推進し、長時間シミュレーションも取り入れることで、比較的大きな構造変化も考慮した親和性計算を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、予定していた計画通りに研究を遂行する。具体的には、実験的検証と構造シミュレーションの両輪を回していくことで、超高精度の構造シミュレーション法を確立しつつ新たな発見を目指す。 (1)ALK、ROS1, EGFR, NTRK, RET等融合遺伝子陽性患者で、いずれかの分子標的薬に耐性となった患者より見出した耐性変異体(単一変異だけでなく重複変異も含む)や活性を変化させる変異体、ENU mutagenesisなどにより実験的に誘導した新規変異体を同定し、その耐性度合いやキナーゼ活性について実験的に調べると同時に、シミュレーションにより結合自由エネルギー(ΔG)計算等を実施し、例外的なケースがあるかを調べつつ計算手法の改良も図る。(2)耐性変異(重複変異を含む)をコンピュータシミュレーションにより予測する。すでに、ALKのキナーゼ領域を中心に種間および、チロシンキナーゼファミリー間での保存を考慮に入れて多様な変異体をコンピューター中で作成しており、その親和性計算に基づき新規耐性変異の発見を目指す。 (3)ALKやEGFR、ERBB2について、キナーゼ活性を上昇させる活性化変異体の構造を予測に挑戦する。また、親和性が高いと考えられる化合物の探索もin silicoで挑戦する (4)引き続き長時間シミュレーションによる活性化構造や過渡的構造変化の解明を目指す。 (5)これまでに構造が十分に明らかになっていない分子について、推定された構造情報を基に動的構造情報を取得し、構造シミュレーションを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に購入予定であった試薬等消耗品が、納期が想定以上かかる事態となったため、次年度に購入し実験実施とするため。なお、予算執行率は96%超であり、ほとんどのものは予定通りに執行した。
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