研究課題/領域番号 |
22K18427
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
風呂田 郷史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (30804778)
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研究分担者 |
辻村 清也 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30362429)
延 優 (NOBUMASARU・KONISHI) 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (40805644)
金子 雅紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (80633239)
五十嵐 健輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (90759945)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 地下生命圏 / 炭素循環 / 生物地球化学 / 電気化学 |
研究実績の概要 |
生命活動の根幹は「電子の授受」による代謝である。従来の生物学的、分析化学的手法では、生命活動の「静止画」を一時的な物質の存在量から観測することしか出来ておらず、実際の自然環境における生命活動の『速度』を動的に直接捉える方法は皆無である。本研究では、微生物の細胞外電流測定を突破口に、推定すら困難な地下生命圏の微生物代謝速度測定を可能にすることを目指す。当該年度は細胞外電流を高い確度と精度で測定するための電流測定条件の構築と修飾電極の基礎となる各種分子の電極反応技術の構築を試みた。電流測定実験は、野外環境から採取した堆積物のバルク培養を中心に実施した。最適な電流測定の条件検討(電極素材・形状、印加電位など)を現在進行中で進めているところである。微生物の代謝速度(培養系の代謝産物の生成速度)と正の相関関係を示す電流測定に一部成功しており、本研究コンセプトの実現性が培養系によっては高いことを確認できている。電流測定が成功している培養系に関してはゲノム解析も進めており、次年度以降はゲノム技術と融合してさらなる技術発展に挑戦する予定である。修飾電極開発では、修飾剤の候補となる各種分子や酵素を用いた培養実験と電流測定実験や、基礎的な電気化学実験を実施した。一部の修飾電極開発では、微生物の生体分子を直接的に電極反応させることに成功している。次年度以降は、電極への各種分子や酵素の固定方法を検討し、実用可能な電極デザインを目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に記した通り、一部の培養系では代謝活速度と正の相関関係を示す電流測定に成功している。また、修飾電極開発においても、これまで報告例のない生体分子の電極反応に成功している。研究を開始した1年目としては予想以上の成果を得られており、「当初の計画以上に進展している」と評価できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
一部の培養系では微生物代謝速度と正の相関関係を示す電流測定に成功している。次年度以降は培養系の種類を増加させ、電流測定法の汎用性を確認する。また、ゲノム解析技術と融合することで、得られた電流値を代謝速度に逆算する方法論を検討する。修飾電極開発においては、実用性の高い各種分子や酵素の電極修飾法を検討する。特に、今年度得られた電極反応技術を基に、修飾電極の開発を進める。開発した修飾電極は、各種培養実験に適用し、その実用性を検証していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、各種電流測定実験を多様な条件で実施する予定であった。しかしながら、実験の初期段階で予想以上のデータを取得することに成功したため、後半はデータの解釈やとりまとめに時間を費やした。そのため、旅費や物品購入が予定よりも少額となった。当該年度に実施できなかった実験等は次年度以降に実施予定である。そのための費用として、差引額を利用する予定である。
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