研究課題/領域番号 |
22K18454
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
香田 啓貴 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (70418763)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 図形表象 / 絵画 / 文化進化 / 生物進化 / 記憶再生課題 |
研究実績の概要 |
引き続き,本研究計画の骨子・中心的な概念である文化進化伝達の動物研究の応用可能性についての調査にあたるとともに,収集した実験データについての分析を進めた.主に,線分という図形を記憶し,その図形の形状を操作によって再現する,図形記憶(線分分割位置・記憶)再生課題を進めている.サルの図形記憶実験で得られたデータの分析を進めた結果,線分の分割・及び認識において,中点による二分割といった,図形の空間的な表象を利用しにくく,むしろ,線分の絶対的な量だけを手がかりに記憶する傾向が高いようだった.当初計画通りの伝達実験を実施すると,分割パターンに特徴的なアトラクターが出現する様子が観察できた.その比較として,ヒトで類似の課題で,大規模な実験を進めたところ,ヒトでも分割パターンに特徴的なアトラクターが出現するが,サルのパターンとは違い,二分割操作に関連すると考察できるような分割パターンが出現した.こうした文化進化現象をさらに調べるために,色を記憶再現して,塗り絵の伝達過程を調べる文化進化実験を実施したところ,初期世代でランダムに配色された塗り絵が,特定の色パターンが出現するような文化進化が確認できた.記憶再現の過程で,塗り絵のイラストに表現される「花」や「動物」など,特定の物体に対する「色」に関する知識が,伝達過程に影響し,その色が出現するような文化進化過程が確認できたものだと考察できた.こうした一連の成果を,現在論文としてまとめようと進めている.また,近年の動物を利用した文化進化研究の状況について,簡単な総説論文を出版した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究データは少しづつ蓄積されたが,主として取り組むための人材雇用が進まない.
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今後の研究の推進方策 |
研究員の雇用が十分に可能な予算配分があるため,研究補助者の雇用の可能性を引き続き模索するとともに,学生の研究の一環としてすすめて,実験を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究員の雇用事情は困難を極めており,期待した人材の確保は進まない一方,学生の研究の一環として進めたため,予算の差額が生じている.
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