• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

哲学と言語学の有機的結合の試み:言語哲学を超える研究モデル

研究課題

研究課題/領域番号 22K18461
研究機関国際基督教大学

研究代表者

水田 洋子  国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (30413941)

研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2025-03-31
キーワードコーパス分析 / 本質 / 批判的思考 / 固有名 / 言語知識 / 世界知識 / 論理関係 / 談話構造
研究実績の概要

研究計画に沿って3種類のケーススタディを並行して進めた。#1(人間はいろいろなカテゴリーの質的構造や概念の本質を、日常的な経験を通してどのように(再)認識していくのかという哲学的な問いを、コーパス分析に基づいて探求する):現代日本語書き言葉コーパス(BCCWJ)による検索結果(3500件余)を使って「本当の」の使用文脈について質的分析を進めた。まず検索結果全体に基づいて議論した論文を仕上げた(本の章として出版予定)。「本当の」は価値判断を伴う中心性を表し、「本当の」と後続名詞句(NP)との意味論的な関係は大きく4つに分類されると議論した。次に、高頻度のNPのうち「自分」と「幸せ」について、「本当のNP」の内容をNPの語彙意味的特徴や文脈(特に共起表現)との関連で詳細に分析した。その結果、「本当の」は形式、現象、ステレオタイプなどを超える深い認識を指向する一種の批判的思考を裏付け、語用論的には対照マーカーであるとの知見を得た(2023年7月の国際語用論学会で発表予定)。
#2(固有名について):代表的な哲学的理論を言語学の観点から議論し、問題提起をした。特に、名前は言語表現であるが各個体の命名状況(したがって各名前にどの個体が対応するか)についての知識自体は世界知識であり、言語知識は発話中/文中の名前と上記世界知識との関わりにおける規則性についての知識であるととらえた。この区別を欠く固有名の意味論は、必要以上に複雑になる。具体的な指示対象を取り込む指示説は、この区別を欠きアドホック性を持つ。述語論理の観点から、指示説と述語説は相補的な面を持つとの知見も得た。
#3(言語表現と論理や思考との関係を議論):コーパスデータを使って「逆に言えば」の使用における論理関係と談話構造を分析し、「裏を返せば」との比較や英訳の多様性を議論した(2022年12 月に日本語用論学会で発表した)

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究は概ね計画通りに進んでいるが、諸事情により発表/執筆が遅れている(特に上記#2の固有名について)。

今後の研究の推進方策

上記3種類のケーススタディのうち、特に#1(「本当の」に関するもの)と#2(固有名)に重点を置く。#1は、上記の知見を更に深め検証するために、上記「自分」と「幸せ」以外の具体的な後続名詞句についての分析を進める。また、哲学的な観点から議論を掘り下げる。#2は、現時点での研究成果をもとに論文の執筆・投稿を行うと共に、次のステップとして、特に同名問題や空名問題を掘り下げていく。時間配分を考慮し、論文執筆のテーマおよび投稿先は厳選する。

次年度使用額が生じた理由

シカゴ大学に1週間ほど滞在して教授と議論することを計画していたが、COVID-19の状況などにより延期したことと、論文投稿の延期によりそれに関する予算が繰り越しとなったことが主な理由である。2023年度に同じ用途で使用する方向で調整中。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] A corpus-based case study of human understanding of concepts and reality: Japanese "jibun" (‘self’) and "shiawase" (‘happiness’) modified by "hontou-no" (‘true’)2023

    • 著者名/発表者名
      Yoko Mizuta
    • 学会等名
      The 18th International Pragmatics Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 「逆に言えば」の使用に関わる論理関係および談話構造:「裏を返せば」との比較2022

    • 著者名/発表者名
      水田洋子
    • 学会等名
      日本語用論学会第25回大会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi