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2023 年度 実施状況報告書

哲学と言語学の有機的結合の試み:言語哲学を超える研究モデル

研究課題

研究課題/領域番号 22K18461
研究機関国際基督教大学

研究代表者

水田 洋子  国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (30413941)

研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2025-03-31
キーワードコーパス分析 / 自分 / 幸せ / 現象と本質 / 固有名 / 直接指示 / スペースと世界 / 空名問題
研究実績の概要

研究計画にある2種類のケーススタディ、#1(コーパスデータに基づく「本当のN」の分析)と#2(固有名)を進めた。
#1は、Nが「自分」と「幸せ」の場合についての分析を国際語用論学会(2023年7月)で発表し、内容を発展させて論文執筆中である。例えば、「本当の幸せ」は、内面性、困難や努力を伴って得られる、他人を犠牲にしない、などの特徴を持つとの認識が観察された。他言語や哲学の視点も加えて、「幸せ」の構造や本質を掘り下げるというテーマも見出した。
#2は、発話中での固有名の使用に関わる3つの要素―言語情報(意味論的・語用論的性質)、世界知識(個体の命名状況)、コンテクスト情報―の関わりについて考察を発展させた。また、固有名詞としての用法は本質的に直接指示(directly referential)であることを確認し、定冠詞句の指示用法(Donnellan, 1966)および指示詞(indexicals)との共通点を見出した。
2024年3月にシカゴ大学への訪問が実現し(当初予定の2022年秋から延期)、教授と集中的な議論を行うとともに、知の構造についての学際的なアプローチを行った学会(“Phronesis”)に参加した。論文や今後の研究に反映できる収穫を得た。
固有名に関わる基本として、referenceの概念を精緻化した。Fregeのsenseとreferenceについての古典的な議論を複数の根拠により批判し、McCawley (1998)の言語学的な洞察を発展させたもので、referenceにスペースと世界という2つのパラメターを導入した。空名問題など固有名の主要課題への鍵となる。2024年6月に国際学会(Pragmasophia 2024)で発表する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究は概ね計画通りに行っているが、主に以下の理由により成果発表などが遅れている:1) トピック#1は、哲学的な考察が奥深く、どこまで踏み込んで(どこで区切りをつけて)論文にまとめるかの判断が重要、2) トピック#2は、研究課題の「哲学と言語学の有機的な結合」の前提として、長い歴史を持つ固有名の研究についてさまざまな角度から慎重に考察を重ねている、3) 論文執筆や研究にとって重要な位置づけにあったシカゴ大学訪問の時期が、当初の予定より1年半遅れた。

今後の研究の推進方策

引き続き2種類のケーススタディ、#1(「本当の」に関するもの)と#2(固有名)に重点を置き、また最終年度のため成果発表を意識して進める。#1と#2について、内容を厳選した論文執筆(各1本)、#2については更に、2024年6月の学会発表に基づいた論文執筆を計画している(いずれも国際誌への投稿)。

次年度使用額が生じた理由

論文投稿の予算が繰り越しとなったことが主な理由である。2024年度に同じ用途で使用する方向で調整中。なお、最終年度の当初予算が前年度までより少ないことと、円安による出張旅費(2024年6月)の高騰が続く見込みのため、今回の繰り越しが有効に働くと思われる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] A corpus-based case study of human understanding of concepts and reality: Japanese jibun ('self') and shiawase ('happiness') modified by hontou-no ('true')2023

    • 著者名/発表者名
      Yoko Mizuta
    • 学会等名
      The 18th International Pragmatics Conference
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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