研究課題/領域番号 |
22K18464
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 第二言語 / 感情 / fMRI / 言語経験 |
研究実績の概要 |
母語とは異なり、外国語だと感情移入しにくい、あるいはうまく自分の感情を表現できないと言われている。学習の感情的文脈理論 (emotional contexts of learning theory)」によれば、私たちの身体に根付いている感情は母語を通して形成されている。一方、外国語は感情的情報が欠如した文脈で(例えば、学校教室)で学習されることが多く、感情的共鳴(体で直感的に感じること)が少ない。本研究では、教室外での外国語使用経験が、外国語における感情の理解・表現の神経メカニズムにどのような影響を与えるのかを、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)用いて解明することである。特に、感情を想起させる様々な場面や状況における学習者の言語経験(言語使用量、使用相手、使用内容等)を詳細に調べるために、実生活の中で学習者の言語使用を量的・質的に調査するために開発された質問紙などを使用する。また、感情を司る脳は深部にあるため、数ミリ単位で正確に特定できるfMRIを用いて、学習者が外国語で感情表現を処理する際の感情領域の活動の強さを分析する。2022年度は日本に1年以上滞在する中国人日本語学習者を対象に、日本語の感情言葉の処理時の脳活動を測定するfMRI実験を行った。途中までのデータを分析した結果、感情言葉を聞いている際に扁桃体の関与度が言語使用経験に従って変化することが検出された。これらの成果を、2023年3月アメリカ応用言語学会(AAAL2023)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに実験を実施し、分析を行い、仮説の一部が検証された。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度のfMRI実験の一部のデータ分析を通して、第二言語学習者の教室外での言語経験が感情言葉獲得において重要な要因であることが神経科学的に検証された。2023年には異なる母語話者で日本語を学習している学習者を対象に感情言葉の処理に関する実験を追加して続けるする予定ある。さらに、英語を第二言語として学習している日本語母語話者を対象に、感情言葉学習実験を実施し、学習効果について認知神経学的観点から検討する予定ある。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の実験を行い、結果を得ているが、まだ継続して被験者を募集する予定である。そのため差額が発生している。2023年には追加実験を完了させ、これまでの実験結果をまとめる計画で、fMRI使用料金、被験者や実験補助者の人件費、英文校閲の費用として用いる。
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