現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は本研究課題の2年目に当たり、図書購入等の資料収集に努めるとともに、研究成果を国際学会で発表することを目指した。ASEAN文学・環境学会において本プロジェクトの成果の一端を発表することができたことは幸いであった。また文学・環境学会日本支部の運営(国際学会の開催等)に関わった経験から、ASEAN地域における同様の、非常に活発な活動を目の当たりにし交流できたことは有意義であったと思われる。またその準備段階において「水俣フォーラム福岡展」の講演やドキュメンタリーフィルムの上映に参加し、さらにジョニー・デップ主演の映画MINAMATAを鑑賞する機会を得たことは研究発表の構想にインスピレーションとなったと思われる。石牟礼作品における「水」のイメージに注目し、水俣病問題が生命の根源に対する汚染として表象された経緯を論じることができた。 その一方において、もう一つの水の汚染である足尾鉱毒事件ついて考察し「足尾から水俣へ」という産業汚染をめぐる「近代の構図」について考察する余裕がなかったのは残念であり、今後の研究計画に取り入れたい。すでに刊行済の「ことばの近代―石牟礼道子における風土と文学」『文学と環境』6 (文学・環境学会、2003年)および2本の英語論文“Minamata and the Symbolic Discourse of the South” Ecoambiguity, Community, and Development (Lexington Books, 2014)、“Ethics of Natural Disaster: Shozo Tanaka and Ashio Mine Poisoning.” Tamkang Review, no. 37 (Autumn 2006)を進展させ統合するかたちで 、産業公害をめぐる「近代の構図」について考察したい。
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