本年度は、これまでデータベースが整備されていなかった堅果類の中から候補となるコナラ、ミズナラ、アベマキ、スダジイ、トチノキ、オニグルミの6つの植物種を選定し、RNA-Seq解析を実施し、それらがコードするタンパク質のアミノ酸配列を同定することでデータベースの作成を行った。スダジイとトチノキについては、現生の果実試料を用いてタンパク質を抽出してプロテオーム解析を実施することで、それぞれ6135及び5636種のタンパク質を同定することができた。今後、これらのデータベースを用いて、植物遺体及び土器付着炭化物のプロテオーム解析を進める予定である。前年度に検出された土器付着炭化物のクルミ属のCupinファミリータンパク質が、オニグルミ由来と推察されたため、新たに作成したオニグルミのデータベースを用いて再解析したが、オニグルミに特異的なペプチドの検出には至らなかった。また、土器付着炭化物については本年度も継続して解析を行っており、ダイズ属等のCupinファミリータンパク質を検出することができた。一方、現生のイネ果実を土器で煮て得られた炭化付着物について、タンパク質の分析を行ったところ、前年度に炭化米の試料で同定されたタンパク質と同じタンパク質が複数検出された。この結果から、炭化過程において残存したタンパク質が、経年変化の影響をあまり受けないことが示唆された。今後、多様な植物試料を用いて、同様の実験を行うことで、植物果実の炭化過程におけるタンパク質の安定性についても解析を進めたい。
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