研究課題/領域番号 |
22K18493
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
石村 智 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 無形文化遺産部, 部長 (60435906)
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研究分担者 |
清水 信宏 北海学園大学, 工学部, 准教授 (60892304)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 文化遺産 / リビングヘリテージ / スーダン / 文化多様性 / 平和構築 |
研究実績の概要 |
本研究は、ポストコンフリクト国において、文化遺産が文化多様性の保護および促進に貢献し、平和構築に資するものとなる可能性を探るものである。具体的には、長年にわたって内戦と政情不安にあったが、2019年に独裁政権が倒され、新たな国作りが進められているスーダンを対象に、現地調査を実施し、「生きている遺産」と呼ばれるリビングヘリテージの存在が、コミュニティの文化的資源としてどのように関連し活用されているかを明らかにすることを目標としている。 本研究課題の初年度となる2022年度は、相手国カウンターパートであるスーダン国立民族学博物館との信頼構築と連携を図った上で、2023年2月に一週間程度の現地調査を実施すべく計画を進めていた。現地調査では、現地カウンターパートとの協議および関係強化を実施するとともに、スーダンのリビングヘリテージの現状についての予備的な調査を行う予定であった。具体的には、スーダン国内においてはマイノリティであるキリスト教徒コミュニティを対象に、彼らの信仰がその建築や生活文化にどのように反映されているかを、聞き取り調査等を通じて明らかにしていく予定であった。 しかし現地の治安情勢が不安定になったために2022年12月の段階で渡航を断念した。そのため本年度はオンライン等で現地カウンターパートと協議を進めつつ、次年度に現地踏査を実施すべく準備を進めるとともに、次年度に現地カウンターパートの日本への招へいを行う計画を進めた。またスーダンに関する文献を収集しその分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度の段階で現地スーダンの治安情勢が悪化したため、現地調査を延期せざるを得なかったため、本年度の計画を達成することは出来なかった。さらに2023年度になり、2023年4月にスーダン国軍と民兵組織(RSF)が武力衝突を起こし、今現在(2023年5月)、現地は混迷の度を高めている。そのため2023年度に予定していた現地調査および現地カウンターパートの日本への招へいも、めどが立たない状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように本研究課題を取り巻く状況は非常に厳しいと言わざるを得ない。しかし本研究課題の「ポストコンフリクト国の平和構築」というテーマは、かえってタイムリーなものとなっていることは確かである。現在最も懸念されるのは紛争下での文化遺産の毀損であるが、本研究課題ではこの問題に関心をシフトし、今でしか行えない調査研究を行いたいと考えている。具体的には、現地と行き来することは難しくとも、現地カウンターパートとオンライン等を通じて連絡をとりつつ、聞き取り調査等を進めることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は現地の治安情勢の悪化により当初計画していた現地調査を実施することが出来なかったため、多くの予算を次年度以降に移すこととなった。2023年度には本研究の方針を大幅に見直しつつ、最大の成果を上げるべく事業を実施していきたいと考えている。
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