研究課題/領域番号 |
22K18504
|
研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
吉田 容子 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (70265198)
|
研究分担者 |
久木元 美琴 専修大学, 文学部, 教授 (20599914)
須崎 成二 立正大学, 地球環境科学部, 助教 (30937678)
原口 剛 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (40464599)
松岡 由佳 函館工業高等専門学校, 一般系, 准教授 (60911922)
小谷 真千代 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (00945587)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
キーワード | コロナ禍 / 経済的困窮世帯 / 地域労働市場 / 地域社会 / 定性的分析 |
研究実績の概要 |
コロナ禍で困窮する世帯・個人を対象に定性的データを収集し、日常生活の中で直面した状況を詳細に把握するとともに、非正規労働力を抱える地域労働市場で何が生じたのか、地域社会は困窮する人々への支援面でどう機能したのかについても明らかにする。コロナ禍では、経済的・社会的に弱い立場の人々がさらなる打撃を受けた。人々の「声」を掬い上げ定量的データの分析からはみえにくい地域の実情や課題をあぶり出すことに、研究の意義がある。 2022年度の研究成果は以下のとおり。吉田:都道府県の労働局が公表する統計情報の中で、求人・求職や労働市場の動向に関わるデータを把握し、企業や個人に「コロナ解雇」の実態調査を行う準備に着手した。原口:東京山谷で野宿生活を続ける人々が、コロナ禍でさらなる窮地に追い込まれた実態を把握するため、支援団体への聞き取りを実施した。久木元:コロナ対策で外出自粛や休園があった中、保育を含む家庭内のケアワークへの影響を、未就学児のいる世帯へのインターネットアンケート調査から把握した。通園できない期間が続いたうえ、子どもの居場所が自宅しかなかったことや、家庭内暴力が起きた・増えたとの回答もあり、緊急時の手段的・情緒的サポートの不足が重大な問題を生み出した。松岡:厚生労働省や都道府県の労働局が公表する障がい者雇用状況の集計データを収集し、全国や都道府県レベルでの雇用者数・実雇用率・法定雇用率等の推移や現状を確認した。須崎:東京新宿2丁目のゲイバーやレズビアンバーへのコロナ禍の影響を明らかにするため、店舗への聞き取り調査を行う準備に着手した。小谷:サンパウロの請負業者現地法人に、コロナ禍での対応やデカセギ希望者への影響を聞き取った。日本政府によって出入国規制の強化/緩和が繰り返される中、日系人の在留許可取得手続きが複雑化・細分化し、デカセギ希望者の属性によって対応が違ったことがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により、研究代表者および分担者が所属する研究機関において、2022年度の行動指標(とくに研究や出張に関するもの)が「通常通り」まで引き下げられていなかったため、家庭・世帯や個人を対象に定性的データの収集・分析を中心に行う本研究にとって重要となる聞き取り調査が十分に実施できなかった。しかしながら、こうした点について、学術調査をサポートする民間調査会社を利用したインターネットでのアンケート調査の実施や、日本政府や都道府県が公表している統計調査を分析してコロナ禍の雇用状況を把握するなどの対応をとったことにより、本研究課題を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
対面およびインターネットでの研究会を開催しながら、今後の研究の具体的な進め方を検討していく予定であるが、大まかな方策としては以下を予定している。2023年度は、研究代表者および分担者の役割分担に従って研究対象地での現地調査や研究対象者への聞き取り調査の充実をはかる。また、2022年度に収集した統計調査データやアンケート調査の分析結果の公表(学会発表、論文執筆・投稿)を行う。さらに、2024年度には、本研究の成果の一端を国際学会(IGU)で発表する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、研究代表者および分担者が所属する研究機関において、行動指標(とくに研究や出張に関するもの)が「通常通り」まで引き下げられていなかった。そのため、家庭・世帯や個人を対象に定性的データの収集・分析を中心に行う本研究にとって重要となる聞き取り調査が十分に実施できなかったことや、研究打ち合わせ会や研究経過の報告会を対面で実施できなかったことなどがある。2023年度については、研究打ち合わせ会および経過報告会を対面で実施するとともに、本研究メンバー各自が聞き取り調査を行って、定性的データの収集に努めたい。
|